その乗客は、運転席のすぐ脇で罵声を浴びせ続けてきました。会社に押しかけて来て、大声でどなり続け、謝っても謝ってもずっと謝罪を求めてきました。「またあの人がバスに乗ってくるんじゃないか…」そう思うと、眠れなくなり、乗務できなくなりました。カスタマーハラスメント(カスハラ)は働く人たちの心に大きな傷を残してしまうほどの深刻な被害をおよぼしています。

突然の罵声
「ブレーキがきついんだよ!」
首都圏のバス会社に勤務する40代の運転手、山本さん(仮名)は乗客から、突然、こうどなられました。これまでもクレームは経験したことがありましたが、運転席のすぐ脇まで来て、しかもどなられるというのは初めてでした。

その乗客は一見、どこにでもいるような中年の男性。ただ、そのあまりのけんまくに、「危害を加えられるかも」と身の危険を感じるほどのものでした。どう対処していいかわからず、とにかく事故を起こさないようにと、運転に集中していると…

「運転があらいんだよ」「何も言わない。なぜ謝らないんだ」
こう罵声を浴びせられました。その後も、下車するまでの間、ずっとどなられ続けました。たしかに山本さんは、その男性の言うように「ブレーキ」を少し強めに踏みました。交差点の信号が黄色に変わり、前方の乗用車が急停車したためで、今でも、安全上、しかたのない対応だったと考えています。

バス運転手 山本さん(仮名)
「ただただ怖かったです。走行中だったので、信号やお客様の乗車、降車も確認しなくてはならない中で、一方的に攻撃を受け、威圧感を感じました。ことばの強さ、声の大きさ、それに対してこちらは対応できない。危害を加えられたら、バスはあらぬ方向に向かうおそれもあるので、とても危険な状況でした」

執ようなクレーム
しかし、クレームはこれだけでは終わりませんでした。この日、業務を終えて営業所にもどると、ある1本の電話が。
「お客様が謝罪を求めている。直接、謝ってほしい」

事務員からこう言われて、電話に出ると、さきほどの乗客でした。電話にでて、謝罪のことばを述べるも、その男性は激高。

「お前は何でさっき謝らなかったんだ!今から営業所に行ってやる」
そうどなられ、一方的に電話を切られました。そして、数時間後。その男性はあきらかに激怒した様子で、本当に営業所に押しかけてきました。改めて上司と謝罪しましたが、男性は大声でどなり続けました。

「なぜ今頃謝るんだ!」「お前は運転が下手なバス運転手のワーストだ」「上司にも謝らせて、お前は何なんだ!」「俺はお前より年下なのに、こんなことを延々と言われて恥ずかしくないのか」

どんなに謝罪をしても、罵声、暴言が止まることはありませんでした。それどころか、暴言はどんどんエスカレートしていき、運転技術についてだけでなく、人格を否定されるようなことばまで。

その間、山本さんは、とにかく怖くて、情けなくて、腹立たしくて、なんとも言えない気持ちになりながらも、ひたすら耐え続けました。そして、一刻も早く事態を収束させるために、ただただ謝罪をするしかなかったといいます。
守ってくれない会社
一方で、山本さんを大きく傷つけたのは、理不尽とも言える乗客のクレームだけでなく、会社側の対応にもあったといいます。

山本さんは、クレームの電話があった時から、何度も会社で対応してほしいと訴えました。そして、自分の運転には問題がなかったということも主張しました。しかし会社からは山本さんみずからが、直接、謝罪するよう促され続けたといいます


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※長いので続きはソースで

NHK 2019年5月27日 12時41分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190527/k10011930781000.html?utm_int=news_contents_netnewsup_002