著者:前原裕之さん(国立天文台)

8月の明け方には、早くも冬の星座として有名なオリオン座が、東の低い空に姿を見せ始めます。そんなオリオン座の中に新星が発見されました。

新星を発見したのは、香川県観音寺市の藤川繁久さんです。藤川さんは8月7.7984日(世界時、以下同。日本時では8日4時10分ごろ)に焦点距離120mmのレンズとCCDカメラを用いて撮影した画像から、9.4等の新天体を発見しました。藤川さんの観測によると、この天体の位置は以下のとおりです。

赤経 06h09m57.40s
赤緯 +12°12′25.5″(2000年分点)
http://www.astroarts.co.jp/article/assets/2019/08/17962_yoshimoto.jpg
http://www.astroarts.co.jp/article/assets/2019/08/17963_chart.png

この天体は、発見翌日の8月8.8日に山口県の吉本勝己さんや愛知県の広沢憲治さん、千葉県の清田誠一郎さん他の方々によって確認され、10.5等級ほどに減光した様子が観測されました。

8月14.44日にはチリのセロ・トロロ天文台の口径4.1mSOAR望遠鏡を用いて分光観測が行われ、天体のスペクトルに幅の広い水素のバルマー系列の輝線の他にヘリウムや窒素、酸素の輝線が見られること、Hα輝線の幅は速度にして秒速4000km程度になることがわかりました。このようなスペクトルの特徴から、この天体が極大を過ぎた古典新星であることが判明しました。

vsolj-obsなどに報告された観測結果によると、この天体は発見以降減光を続けており、8月13日には11.8等ほどまで暗くなったことが報告されました。分光観測の結果からは、新星爆発によって膨張する物質の速度が大きく、速く減光するタイプの新星であることが示唆されます。今後の減光の様子のほか、X線やガンマ線などでの観測結果が注目されます。

http://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/10795_nova_ori