https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191112/k10012174301000.html


台風19号 緊急放流の6ダム 事前放流の実施体制整っておらず
2019年11月12日 17時04分


ダムの貯水量が限界に近づくと流入する水と同じ程度の水を放流し、下流域で氾濫のおそれがでる「緊急放流」。先月の台風19号では6つのダムで行われました。しかし、このダムすべてで、あらかじめ水の利用者と協議して事前に水を放流するルールを決めていないなど、事前放流の実施体制が整っていなかったことが分かりました。

台風19号による豪雨では関東や東北を中心とする146のダムで、洪水を防ぐために下流に放流する水の量を抑制する「洪水調節」が行われました。

このうち、いずれも県が管理する福島県の高柴ダム、茨城県の水沼ダム・竜神ダム、栃木県の塩原ダム、神奈川県の城山ダム、それに国が管理する長野県の美和ダムでは貯水量が限界を超えると予想されたため、流入してくる水と同じ程度の量を放流する「緊急放流」が行われました。

「緊急放流」をすると下流で氾濫のおそれがでるため、国は1つの回避策として、事前に水を放流してダムの水位を下げ容量を確保する「事前放流」が有効だとしています。

ただ雨が少なかった場合にはダムの水を水道や発電、農業などに使う利用者に影響が出るため、「事前放流」を行うにはあらかじめ実施体制を整えておく必要があります。

しかしNHKが取材したところ、この6つのダムすべてで、あらかじめ水の利用者と協議して事前に水を放流するルールを決めていないなど、「事前放流」の実施体制が整っていなかったことが分かりました。

このうち高柴ダムや美和ダムなど台風の接近に伴って、急きょ、利用者に了承を得るなどして「事前放流」をしたダムもありましたが、水の量が回復しない場合を懸念し、積極的に水位を下げることができていませんでした。

国土交通省によりますと、全国のダムで実施体制が整っているのは1割ほどしかないということで、あらかじめ水の利用者と調整するなど、「事前放流」ができる体制を整えるよう促していく方針です。

ダムに詳しい京都大学の角哲也教授は「災害が迫る中、利水者との調整ができていない状況で事前放流の判断をすることは非常に難しく、事前にルールを決めておくことが極めて重要だ。去年の西日本豪雨を教訓に西日本ではルールを決めたダムが少しずつ増えているが、東日本ではまだ少なく、台風19号を教訓に動きが広がっていってほしい」と話していました。
(リンク先に続きあり)


https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191112/K10012174301_1911121652_1911121659_01_02.jpg