日本を訪れる外国人が増加し、東京五輪も近づいていることから、首都圏の電車では英語アナウンスを耳にすることが多くなりました。それが「まれに気になって仕方がないことがある」という住宅ジャーナリスト、櫻井幸雄さんのリポートです。【毎日新聞経済プレミア】

 通勤時間は短ければ、短いほどありがたい。できれば片道30分以内が望ましいが、首都圏では、抑えた家賃、抑えた価格でマイホームを確保しようとすれば、片道1時間を大きく超えることもやむなしとなっている。

 ◇「ドゥース・トゥー・デーデッド」とは?

 そうした住宅事情もあり、通勤時間が長くなると、電車のなかで過ごす時間も増える。その電車内で、最近、急速に増えているのが、英語案内。日本を訪れる外国人が増加し、東京五輪が近づいている影響だろうか。通勤で毎日聞かされていると、耳に入っても意識しなくなるのだが、まれに気になって仕方がないことがある。

 特に、あまりに発音がよすぎて、英語力の乏しさを実感させられるのが、首都圏のJR在来線で流される車内アナウンス(録音のもの)だ。ネーティブな発音であるため、何度聞いても、「ちょっと何言っているのか、わかんない」部分がある。

 問題は、「席をお譲りください」に該当する箇所。英語力に乏しい私の耳には「ドゥース・トゥー・デーデッド」としか聞こえない。

 TOEICで900点以上の実力をもつ知人(バイリンガルではなく、学習で英語を習得)を連れ出し、気合を込めて聞いてもらったが、その実力をしても、一度だけでは「だいたい分かるが、すべての単語は聞き取れない」とのこと。

 ネットで調べてみたら、私が「ドゥース・トゥー・デーデッド」と聞き取った部分は「those who may need it」だった。

 それが、「ドゥース・トゥー・デーデッド」に聞こえるのだから、嫌になる。ちなみに、TOEIC900点台の人間も「一度では、mayが聞き取れなかった」と言っていたので、日本人の耳には聞き取りにくい文言であるのは事実のようだ。

 「those who may need it」の前に「please offer your seat to」が付き、「優先席を必要とされるお客様がいらっしゃいましたら、席をお譲りください」ということになるようだ。

 ◇東海道新幹線は「わかる!」

 これに対して、耳にやさしいのが、東海道新幹線の肉声アナウンス。2年前から始まっており、決して上手とは言えない「ザ・ドアーズ・オン・ザ・らいとさいど・ウィル・おーぷん」は、欧米人に通じるのかな、と心配になることもあった。が、少なくとも日本人には、何を言いたいのか、は理解できる。「わかる、わかる、そういう英語になっちゃうよね、ご同輩」である。

 私は仕事の足として、東海道新幹線の新横浜―東京駅間を頻繁に利用するので、この肉声アナウンスを何度も聞かされてきた。1年以上聞かされているうちに、総じてうまくなってきたような気がする。

 もちろん、ネーティブな発音とはいえないが、英語に慣れたのか、なんとなく自信が出てきたような、「外国の方に話しかけています」という意識のようなものを感じる。この調子なら、東京五輪の頃には、立派に通用するようになりそうだ(と、偉そうに言えるほどの語学力ではないが)。

 「ヘタでもなんでも、とにかく話し続けることが大事」という外国語習得のキモを改めて感じた。

 ちなみに、新幹線の生アナウンスには、個人差が大きく、妙に流ちょうな英語を耳にしたことがある。若い男性の車掌さんとおぼしき声で、ネーティブに近い日本人の英語、という感じ。学習によって、英語が上手になったと思えるしゃべり方だ。そこまで上手にしゃべられると、まったく英語に自信のない私も、もう少しなんとかしなければ、と思う。

 通勤電車など、度々利用する電車の「英語アナウンス」は、語学習得の向上心を刺激する効用もあるようだ。

1/18(土) 9:30配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200118-00000005-mai-bus_all