―内閣などが認めれば幹部ポストに留任できる「役職定年制」の特例規定がある。
 三権分立を侵すことにつながりかねない。行政が司法の人事を仕切ると政治家に恐れるものがなくなり、政治家をセーブできない。
「桜を見る会」を巡り弁護士らが公選法違反などの疑いで安倍晋三首相らの告発状を東京地検に出す予定があるなど首相に関わる問題があるのに、
検察が政権の意のままになれば法治国家でなくなる。民主主義の崩壊につながる。

 ―政府は従来の法解釈を変更して黒川弘務東京高検検事長の定年延長を決めた。
 特別法の検察庁法を、一般法である国家公務員法で解釈変更できるというのは理論的におかしい。
もし黒川氏が検事総長になれば、森友学園問題を巡り政権に忖度(そんたく)した佐川宣寿元国税庁長官のようになっていた可能性がある。

 ―自民党内での議論は。
 党内で正面から反対する人がごく少数。党の資金や人事を党幹部が握り、自分の頭で考え自由に意見を述べる風潮が薄れた。
官僚も人事を握られ、正論や本音を言えない。安倍政権では友人や支持者に便宜を図り、問題が明らかになると役所に責任を転嫁する。
政治の信頼や信用が失墜した。

 ―会員制交流サイト(SNS)で相次いだ批判が今国会成立断念につながった。
 著名人らのネット上の反対でマスコミも動き、国民の良識で思いとどまってくれた。民主主義が救われた思い。
元検事総長ら検察OBが毅然(きぜん)と反対したのも決め手になった。政治家や官僚、マスコミもこういった問題にもっと敏感に反応する必要がある。