新型コロナウイルスの流行後、初めての夏がやってくる。そんな中、思わぬ“盲点”となりそうなのが「エアコンによるコロナ感染」のリスクだ。

〈中国・広州市のレストランにおける、新型コロナ発生とエアコンの関係〉。そう題されたアメリカ疾病対策センター(CDC)の調査報告には、新型コロナに関する“思い込み”を覆す衝撃的な内容が記されていた。

 調査は、1月24日に中国・広州市のレストランで発生したクラスター(集団感染)の感染経路を解析したもの。レストランのフロアは広さ145平方メートルで、83人の客が15卓のテーブルを囲み、春節の料理を楽しんでいた。

 前日に武漢を訪れ、この日に広州に戻った女性Xさんが感染源となり、彼女の親族を含む計9人が二次感染した事例だ。

 報告書に記されたのは、感染者全員が「エアコンの風の通り道」に座っていたという事実だった。

 感染した9人は、Xさんと同じテーブル(別掲図のA)に4人(いずれも親族)、残りの5人はAの両隣のテーブル(B、C)に座っていた。3つのテーブルは、いずれも室内に設置されたエアコンから吹き出す風の通り道に位置している。この動線から外れたほかの12テーブルの客や、フロアで配膳した9人の従業員は感染しなかった。

 これらの事実から調査報告書は、Xさんが食事中に発した飛沫がエアコンの気流に乗って2つのテーブルに届き、二次感染を招いたと結論づけた。空気調和・衛生工学会前会長で、早稲田大学建築学科の田辺新一教授が解説する。

「ウイルスが含まれる咳やくしゃみ、会話などによって発生する飛沫は、5マイクロメートル以上のものを『飛沫』と呼び、5マイクロメートル以下のものを『飛沫核』と呼びます。

 通常、大きな飛沫は水分が多いため口から出てもすぐに落下して1m未満しか飛びません。感染拡大防止策として2mのソーシャルディスタンスを取ることが求められるのはこのためです。

 一方、会話などで生じる水分が小さな飛沫核は、一定期間、空気中に漂います。広州のレストランでは非常に換気が悪くXさんの発した小さな飛沫や飛沫核がエアコンの空気潮流によって室内に拡散し、クラスターを引き起こしたと考えられます」

 Xさんから最も離れた場所に座っていた客は4.5m離れており、ソーシャルディスタンスの盲点を明らかにした。

 意外だったのは、A卓よりもエアコン吹き出し口に近い“風上”のエアコンの吹き出し口に最も近かったC卓でも2人が感染したことだ。感染症が専門の関西福祉大学の勝田吉彰教授(渡航医学)が言う。

「エアコンの風は吹き出し口から出てまっすぐ流れるものばかりではありません。密閉された空間では、エアコンの風が壁にあたって跳ね返るなどして風上にも戻り、空気を攪拌すると考えられます。このレストランでは窓がなく、換気が行き届いていなかったこともクラスターの原因となりました」

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https://news.headlines.auone.jp/stories/series/general/13427094?genreid=202