ミツバチから得られる毒で乳がん細胞をピンポイントに死滅できることが、ハリー・パーキンス医学研究所(オーストラリア)の研究により明らかになりました。

9月1日付けで『Nature』に掲載された論文によると、ミツバチ毒は特に、乳がん患者の10?15%を占める「トリプルネガティブ乳がん」に効果を示したとのことです。

現時点でトリプルネガティブ乳がんに特化した治療薬はなく、ミツバチ毒が新薬開発の鍵となるかもしれません。

また、ミツバチ毒の主成分を既存の化学治療薬と組み合わせることで、乳がん細胞の成長や増殖を抑制できることも判明しています。

トリプルネガティブ乳がんとは?

乳がんは、がん細胞が持つタンパク質により、主に5つのタイプに分けられます。そのひとつがトリプルネガティブ乳がんです。

トリプルネガティブ乳がんは、細胞の増殖能力や3年以内の再発率が他の乳がんよりも高いことで知られ、効果的な治療薬も限られています。

というのも、細胞に「ホルモン受容体」と「HER2(ハーツー)」というタンパク質が存在しないため、ホルモン療法や「トラスツズマブ(HER2と結合して機能する抗がん剤)」の効果がありません。

また、若年性乳がんに多く見られるのも特徴です。

乳がん細胞だけを攻撃できる「ミツバチ毒」

研究チームは、西オーストラリアやアイルランド、イングランドに生息するミツバチから毒を採取しました。

手順としては、二酸化炭素でミツバチを眠らせて、毒を抽出するまで氷の上に寝かせておきます。その後、採取した毒を乳がん細胞に打ち込み、効果をテストしました。

その結果、特定の濃度に設定したミツバチ毒は、注入後60分以内でトリプルネガティブ乳がんとHER2型乳がんを100%の確率で死滅させました。

また、設定された濃度では、正常かつ健康な細胞に害はなく、乳がん細胞だけを攻撃しています。
https://nazology.net/archives/67931