日銀は29日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和や、新型コロナウイルス感染症を受けた企業の資金繰り支援策など現行政策の維持を決めた。4半期に一度の「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、2020年度の実質成長率の見通しを前回から0.8ポイント引き下げ、マイナス5.5%(政策委員の見通しの中央値)とした。

◆主因は回復遅れる対面サービス需要
 見通しの引き下げは、対面を中心とするサービス需要の回復の遅れが主因。リーマン・ショック後の09年の年間成長率実績(マイナス5.4%)を下回る予測となった。
 黒田東彦総裁は会合後の会見で「対面サービスは9月以降緩やかに回復しているが、水準はコロナ前にはかなり遠い。日銀もコロナ対策をしっかりやり、必要なら緩和拡大も可能だ」と述べた。
 展望リポートでは国内景気、海外経済、輸出や鉱工業生産の現状の景気判断を引き上げた。自動車関連などの回復が堅調なためで、業種ごとの差が鮮明になっている。物価の見通しは「Go To トラベル」による宿泊料下落などの影響から当面、前年比マイナスで推移すると見込んだ。

◆コロナ対策の延長、判断見送る
 21年3月を期限とする現行のコロナ対策の延長については判断を見送った。
 日銀は21年度以降の成長率はプラスに転じると見通す一方で、下振れリスクを強調。22日に公表した金融システムリポートでは、景気回復が遅れた場合には22年度に銀行の自己資本比率が悪化し、金融を通じて実体経済に下押しの懸念があると想定した。
 「日銀のシナリオ通りなら、貸し出しは当然渋くならざるを得ない」(大手行幹部)。現状は政府・日銀の資金繰り対策が効いているが、不確実さは残る。

東京新聞 2020年10月30日 05時50分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/65122