https://mainichi.jp/articles/20210312/k00/00m/030/049000c

民族や宗教などの集団を破壊するために、そのグループに属する人たちに重大な危害を加える、出生を阻む措置を強制する――。中国政府が新疆ウイグル自治区で行っていることが「ジェノサイド(大量虐殺)」の定義に当てはまるかどうかが、国際社会の大きなテーマになっている。米政府は新疆ウイグル自治区での人権弾圧を「ジェノサイド」と認定したが、日本はそうした表明には慎重だ。なぜなのか。

国際社会に広がる懸念

 世界中に大きなショックが広がったのは2月初旬、英BBCの報道がきっかけだった。

 「私の役目は彼女たちの服を脱がせ、動けないように手錠をかけることでした」。報道は、新疆ウイグル自治区の施設にいた女性らの証言を基に、施設内で組織的な性暴力が行われていたという内容だった。

 中国政府は「うそを広めている」と否定したが、人権重視を掲げる欧米各国からは懸念や非難の表明が相次いだ。

 新疆ウイグル自治区の人権状況に関しては近年、少数民族に対する強制労働や不妊手術の強制、子供に対する同化教育などを告発する報道や報告が次々に出されている。治安対策としてウイグル人らへの監視や取り締まり、収容施設への移送を強化していることを示す中国政府の「内部文書」も取り沙汰され、報道機関などによる分析が進んでいる。ウイグル人など100万人以上が中国国内で強制収容されているとの見方もある。

米国は「ジェノサイド」と認定

 国際社会に懸念が広がる中、他国に先駆けて強い対応をとったのが米国だ。

 ポンペオ国務長官(当時)は退任を目前に控えた今年1月19日、中国政府が新疆ウイグル自治区で行っている行為を「ジェノサイド」と認定し、「私たちはウイグル人を破壊するための組織的な企てを目撃している」と断言した。

 ジェノサイドはギリシャ語の「人種・部族」とラテン語の「殺す」を組み合わせた造語で、第二次大戦中のナチス・ドイツによるユダヤ人虐殺を非難する文脈で使われるようになった。

 1948年に国連で採択されたジェノサイド条約は、人種や民族、宗教によるグループを破壊する目的で@メンバーを殺害するA重大な身体的・精神的危害を与えるB身体的な破壊をもたらすための生活条件を課すC出生を防止する措置を強制するD子供たちを別のグループに強制的に移す――と定義している。
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2021/3/12 13:00(最終更新 3/12 13:00)
毎日新聞