「G7女性活躍相会合」が開かれたのに、男女賃金格差が最大の日本… 男性を100とすると女性は77.9に 

 日本で初となる先進7カ国(G7)男女共同参画・女性活躍担当相会合の共同声明には、経済面でのジェンダー格差是正が盛り込まれた。日本は議長国として主導的役割を担ったが、G7で男女間の賃金格差が最も大きい。小倉将信担当相も言及した性別による役割分担への固定観念など、多くの要因が絡み合っており、政府は具体策で成果を上げる責任を負う。(坂田奈央)

 G7男女共同参画・女性活躍担当相会合 G7が持ち回りで開催する首脳会議の関係閣僚会議の一つ。ジェンダー平等や女性への暴力根絶など、国際社会が抱える課題について意見交換する目的で、2017年にイタリアで初めて開催された。今回で5回目。日本では初開催。議長国・日本の小倉将信担当相以外は全員女性だった。

◆ほとんど男性の営業部 「体力勝負」と言われ、入り込む余地なく
 「いずれ家庭を持ったり配偶者を養ったりする男性には、給料を上げやすくしてあげたい」。東京都の30代女性は、20代で就職した服飾雑貨メーカーの経営者から言われた言葉が忘れられない。
 配属されたデザイン部は女性とアルバイトが多数の部署。数字で評価しづらい仕事で、給与を上げるには自ら交渉しなければならなかったが、業務に追われ余裕もない。ほとんどが男性だった営業部は、実績が給与アップに直結していた。
 営業部は定時を問わず働く「体力勝負」の仕事だと言われ、入り込む余地はなかった。会社の古い体質から脱したいとの思いが募り、退社した。
◆「世帯主じゃない」という理由を持ち出すこと自体、ずれている
 労働相談などに応じるNPO法人「働き方ASU-NET(あすねっと)」の川西玲子副代表は2年前、ある県庁で雇い止めされた元非正規職員の女性からの相談内容に驚いた。上司から翌年度の再任用を告げられ、安堵あんどした1週間後に「あなたは世帯主じゃないから、やっぱり辞めて」と覆されたという。
 川西さんは「この理由を持ち出すこと自体がずれている。『家計補助で働いているのだから辞めても問題ない』との思い込みがある」と嘆いた。
 経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本は男性賃金の中央値を100とした場合、2021年時点で女性は77.9にとどまる。男女差は22.1ポイント開いており、OECD平均(11.9ポイント差)の約2倍だ。
◆日光での会合は閉幕 女性管理職の少なさが格差拡大招く
 栃木県日光市で開かれたG7男女共同参画・女性活躍担当相会合は25日、男女間の賃金差など経済面でのジェンダー格差を是正すべきだとの共同声明を採択し、閉幕した。女性の役員や管理職の少なさなどが賃金格差拡大を招き、女性への家事労働の偏りなどが要因になっていると指摘した。
 議長を務めた小倉将信担当相は閉幕後の記者会見で、「固定的な性別による役割分担意識の解消に取り組む」と強調した。日本がG7の中で男女の賃金格差が最も大きい理由を問われると、「長時間労働を当たり前とする正規雇用者が昇進しやすい慣行が残り、家事育児等の負担で制約がある女性は登用されにくい状況がある」と説明。「日本だけの問題ではなく、G7各国でも共通している課題だ」とした。
 会合は24日に始まり、「コロナ禍での教訓を生かす」「女性の経済的自立」をテーマに議論した。共同声明では新型コロナウイルス禍で、家事や育児、介護を主に担う女性の経済的基盤の不安定さが浮き彫りになったと分析。解消には「包括的なアプローチが必要だ」とした。

東京新聞 2023年6月26日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/258892