1980〜90年代に、子ども心を熱くさせたおもちゃが帰ってきた。一大ブームとなった「ミニ四駆」の人気が再燃。
レースを楽しめる専門バーでは「飲みヨンク」に興じる人も。現代版ベイゴマもパワーアップした。親子で楽しむ人も多く、
世代を超えて交流できるツールになりつつある。【井上知大】

JR高円寺駅(東京都杉並区)近くの雑居ビル4階のバーに入った途端、「ヨーイ、ドン」の掛け声とともに「キュイーン」
というモーター音が耳に飛び込んできた。常連客らが、グラス片手にミニ四駆のレースに興じている。

 全長約150メートルのコースを常設する「Hideaway garage」は3月24日、開店3周年を迎えた。
この日は「ミニヨン」の語呂合わせで「ミニ四駆の日」だ。店内には工具もそろい、その場で改造できる。
パーツの組み替えで軽量化を図るなどしてタイムを競う遊び方が、ユーザーをとりこにした。

 週に1度は来店するという杉並区の会社員、井比浩喜さん(30)は「世代の違う人ともしゃべりやすく、
社交場のよう」。同店などによると、こうしたミニ四駆バーは都内や横浜市内に5店ほどあり、2〜3年前から開店しているという。

 ブームを支えてきたのが、全国選手権「ジャパンカップ」と漫画の相乗効果だ。メーカーのタミヤ(静岡市)が88年に開催し、
最初のブームを迎えた。小学生向けの漫画雑誌「月刊コロコロコミック」でミニ四駆を題材にした漫画が連載され、
人気に拍車をかけた。94〜99年に別の漫画が連載中に第2次ブームが起きたが、99年にジャパンカップが終了し、
ブームは過ぎ去った。

 現在の第3次ブームは、タミヤがミニ四駆発売30年を記念し、2012年にジャパンカップを復活させたことがきっかけになった。
中学生以下としていた年齢制限を撤廃し、親子でエントリーできるようにしたことで裾野がより広がった。

 ジャパンカップは、各地で開催するエリア大会で代表者を選び、10月にチャンピオンを決める。12年の出場者数は延べ1万人だったが、
15年には約3万3000人に達した。多すぎるとして昨年は事前抽選を導入したが、それでも約2万5000人が参加した。
マシンの速さではなく、デザインを競う部門もあり、こちらは10〜20代の女性を中心に人気だ。きらきら光るビーズで
車体を飾り立てるなど、派手なデコレーションを施したマシンは「デコ四駆」と呼ばれる。

 東京・品川で昨秋開かれたジャパンカップには、シートを広げて弁当をほおばりながらマシンの手入れや出場を待つ
親子が目立った。宇都宮市から訪れた小学生の男児は父親と出場。「パパに改造を教えてもらえて楽しい」とはにかんだ。

 ベイゴマを現代風にアレンジしたタカラトミー(東京都葛飾区)の「ベイブレード」も三たび脚光を浴びている。
パーツを組み合わせて自分だけのベイ(コマ)を作ることができ、すり鉢状の「格闘場」で回転させて相手の
ベイをはじき出すか、倒れなければ勝ちとなる。00年代初頭に最初のブームとなった後、改良を重ねた08年発売の
第2世代と呼ばれる商品がヒット。15年には相手をバースト(破壊)できる第3世代の「ベイブレードバースト」を発売し、
累計の出荷は3億個を超えている。

 同社も16年以降、年齢制限のない大会を増やしてファン層の拡大を図っており、
広報担当者は「最初のブームで遊んだ世代が帰ってきた」と話している。

ミニ四駆
 タミヤが1982年に発売したモーター付き自動車模型。実物の32分の1のスケールで、累計の販売台数は1億8000万台。
カーブやアップダウンのあるコースを周回して速さを競うジャパンカップでは、全長16.5センチ以下など
競技規則の範囲内の改造は自由で軽量化などが勝敗を左右するとされる。

毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170422/k00/00e/040/254000c?fm=mnm