九州北部を襲った記録的な豪雨。根こそぎにされた木々が押し寄せ、川沿いの民家に突き刺さっている――。6日午後、本社ヘリ「ゆめどり」で、九州大の矢野真一郎教授(河川工学)と上空から被災地を見た。

 大分県日田市から福岡県朝倉市上空に差し掛かると、茶色の濁流と大量の流木が目についた。「かなりの土砂と流木があり、被害は深刻だ」

 日田市を流れる花月川では、JR久大線の橋が橋脚ごとなぎ倒されていた。矢野さんは「水だけの力ではこんな倒れ方はしないだろう。流木が橋でせき止められて水かさが増し、大きな力がかかったのではないか」。2012年7月に熊本、福岡、大分で計30人が亡くなり、2人が行方不明になった「九州北部豪雨」でも、この橋から約1キロ上流の橋で流木が引っかかり、水かさが増して氾濫(はんらん)。過去にも何度も水害が起きてきた。

 九州北部豪雨では4日間の総降水量が500ミリを超えた観測所も複数あった。今回と重なる被災地も多い。「5年前と同様、至る所で土砂災害が起きている」

 茶色に濁った花月川の上流の川をたどると、針葉樹が植林された日田市小野地区のあちこちで大きく山肌が崩れていた。「表層の土が滑り、沢に沿うように一気に土砂やスギの木が流れ出たようだ」

 福岡県東峰村では、道路が寸断され、大量の流木でつぶされた家もあった。川の砂防ダムで土砂はある程度せきとめられたものの、流木はその上を滑るようにして流れ出たとみられる。矢野さんは「土砂だけでは家が壊れなかったかもしれないが、流木は相当なエネルギーを持っている」と語った。

 朝倉市杷木地区付近では、濁流が川から広範囲に道路にあふれ、基礎部分が洗われた家屋が倒れそうになっていた。「土砂が混じった強い水流で護岸が崩れ、そこから水が流れ出している」と矢野さんは話した。

 九州北部豪雨で土木学会の調査団長を務めた小松利光・九州大名誉教授(河川工学)は「流木が橋にひっかかって水が通りにくくなり、氾濫してさらに流木が増える悪循環が起きたのではないか」と指摘する。

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2017年7月7日0時46分朝日新聞
(URL先に動画があります)
http://www.asahi.com/articles/ASK765G6YK76UTIL03H.html
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