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 JR三江線沿線の地域振興を目指す住民団体「江の川鉄道応援団」(会員約80人)などは1日、「天空の駅」として親しまれる宇都井駅と口羽駅間(いずれも島根県邑南町、約5・4キロ)を鉄道公園として整備する構想を邑南町に提言した。

 廃線後も駅舎や線路を使った車両の体験運転などで集客する案で、実現を望む住民ら3277人分の署名簿を受け取った石橋良治町長は、「実現の可能性はある」として、JR西日本との協議の場で提示する考えを示した。

 提言書「JR三江線の鉄道資産を活用した地域振興について」をまとめたのは、同応援団の日高弘之団長(76)や副団長で元JR社員の松島道幸さん(69)ら。廃線が浮上した2015年秋から勉強会を重ねて構想を練る一方、同応援団を含む住民団体「三江線地域フォーラム」を中心に今年5月から、支援者や県内外の鉄道ファンの署名を募ってきた。

 提言書では、鉄道公園の運営主体となる組織を同町・羽須美地区に設立することを提案。宇都井駅周辺では、駅舎を残し、線路でトロッコ型の乗り物や自転車タイプのレールバイクを楽しむ体験型集客イベントを通年で展開するよう示した。

 口羽駅周辺ではかつて同線でも運行した「キハ28」などレトロ車両の展示のほか、駅構内での信号の作動体験や、駅舎での三江線の資料展示を企画。両駅活用の初期投資には1750万円を見込んだ。

 町役場で石橋町長に提言書と署名簿を手渡した同応援団の4人は、▽三江線関連の資料や備品の保存▽広域的な観光振興のための体制整備▽事業費確保――などへの協力を求めた。

 両団体が今年度中にクラウドファンディングや寄付で資金を募り、18年度には口羽駅での乗車体験、宇都井駅でのレールバイク導入を開始するスケジュール案も示した。両駅の中間にある伊賀和志駅(広島県三次市)周辺の住民らからの支援も求めていく。

 日高さんらは石橋町長に「廃線後にたちまち列車が動かなくなるのはさみしい。支援をお願いしたい」と依頼。石橋町長は「前向きな提案に賛同する。ただリスクもあり、行政としてできることを検討したい」と述べた。

 1998年以降、廃線後の線路で月1回ずつ車両の展示運転を続ける片上鉄道保存会(岡山県美咲町)幹事の森岡誠治さん(46)は構想について「三江線には日本の原風景がある。ほかにないものができる可能性がある」と期待する。

 宇都井駅にはこの日も廃線を惜しむファンが訪れ、駅舎に上がって記念撮影をする光景が見られた。鳥取県米子市から初めて訪れた男性(46)は「面白い構想。運転できるならしてみたい。ただ、人が集まるかどうか」と話していた。(岡信雄)

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