通勤・生活路線のイメージに、「遊び心」が加わりつつある?

 東急電鉄は、伝統ある東横線と新興住宅地を貫く田園都市線を基軸とし、
都内城南地区に大井町線、池上線、多摩川線、世田谷線を配した路線網を形成しています。
すべての路線が通勤・通学・生活目的の路線であり、ほかの大手私鉄にあるような「看板となる有料特急列車」はありません。
鉄道趣味的に捉えるとある意味、地味な印象です。

東急電鉄のグッドポイント、ベストテン

 それでは、実は高校卒業まで東急沿線に住み、
再び田園都市線沿線に戻ってきた筆者(杉山淳一:鉄道ライター)の思い込みと独断による「東急の魅力ベストテン」をご覧ください。
もちろん異論は大歓迎、SNSなどで盛り上がってくださいね。


【1位】東急ブランドの「ゆりかご」、田園都市線と「多摩田園都市」

 田園都市線は渋谷から中央林間までの31.5kmを結ぶ路線です。渋谷から都心方向は東京メトロ半蔵門線に直通します。
半蔵門線は開業当初から田園都市線と一体で運行。営団地下鉄(当時)は半蔵門線の開業時に専用車両を持たず、
東急の車両を借りていました。車両は東急ですが、車内広告や路線図が地下鉄の仕様でした。
また、現在も半蔵門線の車両基地は田園都市線の鷺沼駅(川崎市宮前区)にあります。

【2位】東横線の高級住宅地とおしゃれタウン

 東横線は渋谷から横浜までを結ぶ24.2kmの路線です。
2004(平成16)年1月30日までは横浜から先の桜木町駅(横浜市中区)まで通じていました。その翌日に横浜〜桜木町間を廃止。
2月1日から横浜高速鉄道みなとみらい線と相互直通運転を開始し、元町・中華街駅(同)まで乗り入れています。

【3位】高級住宅地ブランド戦略、田園都市構想

 田園都市線沿線の多摩田園都市、東横線沿線の田園調布など、東急沿線には有名な住宅街があります。
これらの住宅街は「鉄道があるから形成された」ではありません。逆です。良質な住宅街を建設するために鉄道を建設しました。
これが歴史の事実です。

【4位】東急グループの生活環境サービス

1位の田園都市線の事例にもあるように、東急グループは生活に必要なあらゆるサービスを事業としています。
それは3位で説明した、優良な居住環境を提供するためです。東急電鉄のほとんどの駅から東急バスが発着しており、
鉄道路線網の空白を埋めています。駅周辺や住宅密集地域にはスーパーマーケットの東急ストアが配置され、
ほとんどの地域で、日用品を徒歩で買いに行けます。

【5位】愛されるローカル電車、池上線、多摩川線

 東急電鉄は「田園都市構想」に基づいて作られた鉄道部門です。しかし、その趣とは異なる路線が池上線です。
池上線は池上電気鉄道が建設、開業しました。目的は池上本門寺の参詣輸送。国営の東海道線が開業し、川崎大師の参詣が賑やかになると
、大師電鉄(現・京急電鉄)が川崎大師〜大森間を開業します。その大森と池上本門寺を結ぶ目的で計画されました。
実際には蒲田〜池上間で開業し、目黒と結ぶ目論見でしたが、目黒蒲田電鉄と競合するため五反田へ延伸したのち、
目黒蒲田電鉄に敵対的買収をされました。