店舗の入り口でSuicaをかざし、入店する(20日、さいたま市)
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 JR東日本は20日、大宮駅(さいたま市)に設けたコンビニエンスストアで無人店舗の実証実験を始めた。スタートアップ企業が開発した人工知能(AI)を使うことでレジ係を不要にした。駅構内の店舗でも人手不足の波が押し寄せるなか、先端技術を使って解決する。旧国鉄時代には大量の職員が在籍したが、民営化から30年たったJR東日本は人手不足の危機に直面している。

 「民営化30周年を迎えたなか、新たに生活サービスの分野にも取り組みたい。若い人の新しいエネルギーと我々のリソースを掛け合わせて新しいサービスを提供したい」。JR東日本の事業創造本部、表輝幸執行役員は20日、大宮駅でこうあいさつした。

 特設店舗は26日まで改札外のコンコースに設ける。一般の人も利用できる。営業時間は午前10時〜午後6時。広さは約27平方メートルと、標準的なコンビニの4分の1程度。おにぎりや飲料、菓子類など約130種類の商品を販売するが、一般的なコンビニとは造りが違う。

 客は店舗入り口のゲート前でICカード「Suica」などを使って入店する。店の出口までの長さは9メートルほど。この間に置かれた商品棚から商品を手に取る。出口の前までやって来ると、壁掛けのディスプレーに購入する商品名と合計金額が表示される。確認したらSuicaで支払う。

 店員が商品のバーコードを読み取る作業はない。代わりに作業をするのがAIだ。それぞれの商品棚の前には小型カメラが1台ずつ設置されている。客が棚から商品を手に取ると、AIは「商品が棚から1個減った」と認識する。そして、AIは天井にあるカメラを通じ、その商品を誰が取ったのかを把握する。AIを開発したサインポスト(東京・中央)のイノベーション事業部、川端英揮マネジャーは「商品をポケットに入れていても問題はない」と話す。AIは客が商品を手に取るたびに合計金額を加算する。システムの開発は4年ほど前に着手した。

 棚卸し作業などがあるため完全には無人にできないが、レジ打ちの作業が省けるだけでも仕事の効率は高まるとみる。小売店ではICタグの導入が進んでいるが、サインポストによると、コンビニの場合、弁当を電子レンジで温める時は火花が散る恐れがあるため、タグを外す手間がかかるという。コンビニでは商品単価が相対的に低く、ICタグを付けるとコストが見合わない可能性も指摘する。

 JR東日本は実験を経て、無人店舗の展開を進める考え。表執行役員は「住宅地にはない東京駅などの駅でも働き手を確保するのが難しい」と話す。同社は2040年に生産年齢人口(15〜64歳)が15年に比べて2割強少なくなることを重視。その時に現在のサービス水準をどの程度担保できるのか、危機感を募らせる。

 同社は昨年11月、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」などの先端技術を積極的に取り入れる方針を打ち出した。今年7月には駅構内でのロボットの活用を進めるための有限責任事業組合(LLP)を設立した。LLPでは今回の無人店舗だけでなく、ロボットが駅構内で道案内をすることも想定する。30年後、駅構内で提供するサービスは大きく変わっているかもしれない。

配信2017/11/20 14:54
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO2368487020112017X12000/