徳島市の市道で2015年10月、警報音を鳴らさず後退してきたダンプカーにひかれて全盲の山橋衛二さん(当時50歳)が死亡し、一緒にいた盲導犬も死んだ事故で、盲導犬の所有者である徳島県が運転手側に損害賠償を求め、示談が成立したことが1日、分かった。県は示談金額を明らかにしていないが、関係者によると20万円程度という。交通事故死した盲導犬の損害が認められるのは珍しく、盲導犬の支援団体は「示談額は低いが、これを機に全国で警報音の義務化が進んでほしい」と話している。

事故死した盲導犬はバルデス(雄、当時10歳)。県が盲導犬訓練所から189万円で購入し、07年に山橋さんに貸与した。県などによると、運転手に有罪判決が言い渡された後、「徳島の盲導犬を育てる会」(徳島市)が盲導犬の社会的価値を認めてもらおうと、運転手側に損害賠償を請求するよう県に要望。県が今年4月から交渉を進めた。

 バルデスは事故の8日後に引退する予定だった。示談金額は盲導犬としての残りの活動期間や技能などを考慮して決まったとみられる。

 事故を起こしたダンプカーには後退時に警報音が鳴る装置があったが、切られていた。徳島県は事故2カ月後、車の接近や後退を周囲に知らせる装置を備えた車両に、使用を義務付ける全国初の条例を制定した。

 盲導犬の事故死を巡っては、名古屋地裁が10年3月、トラックにはねられて死んだ盲導犬の社会的な価値を認め、運転手と運送会社に対し、盲導犬を貸与した名古屋市の財団法人に約290万円の損害賠償を支払うよう命じた。【松山文音】

配信2017年12月1日 12時49分
毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20171201/k00/00e/040/205000c

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