http://www.sankei.com/smp/west/news/180106/wst1801060016-s1.html

 脊髄損傷で手の指の運動機能を失ったサルに対し、神経の再生を促す抗体を投与したところ、指の機能を回復させることに成功したと、京都大の高田昌彦教授(神経科学)や大阪大のグループが発表した。5日付の英専門誌電子版に掲載される。

脊髄損傷は事故やスポーツなどで脊髄の中枢神経が傷つき、手や足のまひの原因になる。国内の患者は20万人以上で、毎年5千人超が新たな患者になっていると推計されるが、有効な治療法は確立されていない。

 グループは脊髄損傷後に、損傷部に増加し神経の修復を妨げるRGMaというタンパク質に着目。このタンパク質の働きを抑える抗体をマウスから作製し、サルに使用した。

 いずれも手の指がまひした脊髄損傷直後のアカゲザル4頭に対し、4週間にわたりチューブを使って直接患部に抗体を投与。その結果、約2カ月半後には、小さな隙間に入れた餌を指でつまみ上げる細かい動作ができるようになり、損傷前に近い状態まで運動機能が回復した。グループは、傷ついた神経が投与後に再生し、筋肉の動きなどを支配する神経と接続したことを確認した。

 高田教授によると、この研究に関連し、グループは田辺三菱製薬とヒト用の抗体を開発。脊髄の中枢神経が、がん転移による圧迫で損傷した患者に対し、早ければ年内にも阪大が中心となって臨床試験(治験)を始める。北米でも治験が行われる予定だ。