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 厳寒の札幌、地下鉄駅に近い住宅街で、就労を目指す人や高齢者たちの住まいが激しい炎に包まれた。11人の命が奪われた札幌市東区の共同住宅「そしあるハイム」で、何が起きたのか。

 31日深夜、札幌市の気温は零下8度近かった。ハイムの隣で飲食店を経営する五十嵐隆之さん(70)は妻と一緒に銭湯から戻ると、建物から黒い煙が出ているのに気づき、119番通報した。1階のすべての窓から煙が出ているように見えた。

 1階正面の玄関から足が不自由な様子のお年寄り3人が自力で出てきて、立ちすくんでいた。うち1人は素足でサンダルばきだった。

 通報した時、2階の窓から、男性が飛び降りた。積もった雪がクッションのようになり、男性は雪の上にうずくまった。目の前の1階の部屋では、女性が「熱い熱い、助けて助けて」と叫んでいた。窓は開いているが、木製の格子があって出られなかった。五十嵐さんは雪の上でうずくまる男性を建物から引き離し、自分の店から持ち出したスコップで格子をはがし、女性の右手をつかんで引っ張り出した。女性は白い寝間着を着ていたが、真っ黒になっていた。

 その直後、2階の部屋から「助けて、助けて」という女性の声が聞こえたが、消防車が到着する頃には聞こえなくなったという。

 暖房器具が爆発したのか、「ボン、ボン」という大きな音が何度も聞こえた。「火の手が強く、あっという間に全体に回ったので、何もできずにぼうぜんとしていた」と五十嵐さんは話した。

 「火事だ!」。ハイムによく出入りするという近所の男性(71)は、入居男性の叫び声で火災に気づいた。建物の1階の窓から激しく火が出ていた。

 「寒い、寒い」。着の身着のままで避難した男性入居者が震えており、ジャンパーを貸した。火はその後、2階へ燃え移っていったという。