「超繁忙期」、一時的な増強は一筋縄ではいかない

 毎年3月、4月は引っ越しのかきいれ時ですが、近年、引っ越し業者も加盟する各地のトラック協会が、同時期の引っ越しを避けて依頼を分散するよう呼びかけています。

全日本トラック協会などが発行する「引越繁忙期対策チラシ」では、2018年は3月24日(土)から4月8日(日)を、「特に混雑が予想される」時期とし、「混み合う時期は『希望日にあう事業者がみつからない』など、ご希望に添えない場合もあります」としています。どのような状況なのか、同協会に聞きました。

――呼びかけの背景にはどのような状況があるのでしょうか?

 3月、4月に依頼が集中するのはいまに始まったことではなく、過去から「超繁忙期」です。しかしここ数年、需要に対して供給が追い付かない状況が続いており、毎年呼びかけをしています。

――事業者はどのように対応しているのでしょうか?

 特に混みあう日の料金を高くするケースもあろうかと思いますが、そもそも物理的に、ない袖は振れない状態です。たとえば混みあう日には、ほかの運送事業者に委託したり、車両や人員を融通してもらったりして対応する事業者もあるでしょう。しかし、引っ越しは単にモノを運ぶだけではないので、スキルのないところに頼むとトラブルのもとにもなります。ほかの輸送品目においても繁忙期ということもあり、一時的な増強は一筋縄ではいきません。

――呼びかけのほか、どのような対策をしているのでしょうか?

 転勤や異動のシーズンに重なることから、国民の皆様だけでなく、さまざまな経済、業界団体に対しても、3月から4月中旬までの引っ越しを避けてほしいとお願いしています。

大量採用で乗り切る会社も

 北海道トラック協会では2018年1月、北海道運輸局などの協力のもと、札幌駅前通の地下歩道で引っ越しの分散を呼び掛けるキャンペーンも行いました。その参加事業者であり、全日本トラック協会の引越部会に加盟する山登運輸(札幌市東区)は、「ここ3、4年は厳しい状況」と話します。

「繁忙日にはほかの事業者から人員を借りるなどして対応してきましたが、集中短期型の労働に対して条件が厳しくなっています。日にちがずれれば可能なものの、『この日しかない』というお客様に対応しかねる状況も発生しています」(山登運輸)

 山登運輸によると、繁忙期に際し毎年2月くらいから募集をかけ、ドライバーや作業員を増員しているそうですが、「通年で人を多く抱えるのはなかなか難しく、どうしてもこの時期だけの増員になってきますが、近年は応募数だけでなく、お話したとおり賃金などの条件も厳しくなってきています」といいます。

 業界大手は、繁忙期をどのように乗り切っているのでしょうか。2013年から2016年まで売上、作業件数ともに業界トップのサカイ引越センター(大阪府堺市)は、次のように話します。

「数年前より、人材確保が厳しくなる状況を予測し、採用と教育に力を入れてきました。新宿や梅田、三宮といった利便性の高い駅前に拠点を設けるなど、気軽に足を運んでもらえる環境を整え、繁忙期の対応を見越して毎年数百人単位、2017年には約400人を採用しています」(サカイ引越センター)

 サカイ引越センターによると、近年採用されたスタッフがドライバーとして成長したこともあり、2016年度末にはドライバー充足率120%を達成したとのこと。繁忙期の対応については、「ご依頼に対し無尽蔵にお応えはできませんが」としたうえで、「ご要望には応えていけると思います」と話します。ただ、新規採用についてはやはり、年々厳しくなってきていると感じているそうです。

 ちなみに、全日本トラック協会によると、混雑が避けられる時期は「3月以前、あるいは4月中旬以降」としています。サカイ引越センターは、「3月の3週目あたりから4月3週目までが、ご依頼が多い時期です。ご希望日に関わらず、なるべく早くお見積り、ご契約をいただける方が安全です」と話します。

2018.02.06
乗り物ニュース
https://trafficnews.jp/post/79621