現3年生が入学した2015年は、大卒求人倍率が大きく回復した年で「売り手市場しか知らない学生」とも言われている。
就活のエントリー企業数やセミナー参加数は年々減少。悲壮感を漂わせた就活生は今は昔。
若手の採用難で、必死の形相なのは学生より企業になりつつある。

■売り手市場しか見たことない

「100社エントリーしたとか、どこにも入れなくて焦っている就活生を見たことは、一切ないです」(国立大4年文系の24歳男性)

「行きたくない会社に行くくらいなら院に行けと、ゼミの先生に言われますね。2年後は東京五輪の年で景気もピークだろうから、
それも悪くないかなって思います」(国立女子大理系3年21歳女性)

2019年卒の学生たちの就活が本格的に幕開けしたが、学生たちに焦りはない。

「やらなきゃなーという話はしますが、正直売り手市場だって、みんな知っています。選ばなければ(どこかの会社には)行けてしまうんですよね」

前述の国立大男性は、冷静に自分たちの就活環境を見ている。

「今年は学生側の立ち上がりは、のんびりしている印象。一番就活生に影響力を持つ先輩たちからも『就活は楽勝』と聞いているので、
それほど心配していないようです」

新卒採用支援サービスを手がけける、エン・ジャパン新卒事業開発室長、林善幸さんは言う。

それに対し「中途も含めて、とにかく若手が取れないことを痛感しているので、企業側は必死です」。企業と学生の温度差が鮮明だ。

■親会社の看板頼み

そうした傾向を象徴する動きの一つに「グループ合同説明会」が増えていることがあるという。

就活解禁で一気に始まる就職説明会だが、これまでは人気企業の単独開催や、就活支援サービス会社主催で異業種との合同開催がもっぱらだった。

それが近年、「グループ会社との合同説明会」が増えているのはなぜか。
その理由を、10年以上にわたり新卒採用に携わってきた、採用コンサルタントの谷出正直氏はこう説明する。

企業セミナー

夏のインターンから採用活動は始まっているが、学生が実際にエントリーしてくれるかは分からない。

「人気の大手企業には学生が集まりますが、そのグループ会社がとにかく人が採れなくなっているのです。今の就活生は内定が取れるかどうか、
ではなく行きたい会社に入れるか勝負になっていますから、学生に名前を知られていない会社の採用は本当に厳しいのです」

例えば総合商社は学生の応募が殺到する人気の就職先だが、そのグループ会社の小売りやリース、化学品などの子会社は、学生となかなか接点を持てない。
「名前の知られた親会社の説明会に来た学生に『こういう仕事もあるよ』とアピールするのです」(谷出氏)