イルカは昔からたまたま海岸に近づいたところを捕らえられた(図 15)。
散発的に獲られたこともあり、あるいは規則的にしかも1つの産業といって
いいほど多数獲られたこともある。 たとえば、11世紀にノルマンディーの
海岸で盛んに獲られ、1098年には法律による捕獲制限が行なわれたくらい
である。 イルカの油はとも燈火用に使われ、肉は人間の食糧となった。
イルカの肉は当時大変美味なものと考えられ、1426年の年代記によれば、
英国のヘンリー6世はこれをとても好んだという。 かれの後継者であるヘン
リー7世の戴冠式の正餐にもイルカの肉はいろいろに調理して、メインコース
あるいはパイとして供せられたという。

オランダの鯨類学者 E.J. シュライパー (E.J. Slijper)博士の著書「鯨」より