農業機械大手が自動運転技術を相次ぎ実用化している。クボタは自動運転のコンバイン、ヤンマーホールディングスは自動運転のトラクターを相次ぎ発表。井関農機は水田を自動で直進する田植え機の品ぞろえを拡充した。高齢化が深刻で狭小農地が多い日本の農業が競争力を高めるには、技術革新に歩みを合わせた環境整備も欠かせない。

 操縦者がボタンとレバーを1回ずつ操作するだけで、コンバインが自動で動き出した。千葉県柏市の麦畑。地盤はぬかるんでいたが、コンバインは全自動で誤差のないターンを繰り返し、刈り取り部も自動で上げ下げする。クボタが12月に投入する「アグリロボコンバイン」と呼ぶ新装置だ。

 人の手で運転する刈り取りでは四角い田畑を渦巻き状に操縦するのが主流だが、アグリロボコンバインは最適な刈り取りルートを選んで旋回回数を抑え、従来のコンバインより作業時間を1割削減できる。クボタは「海外でも自動でステアリングを切る技術は開発されているが、履帯で走行する車両は進んでいない」(担当者)と胸を張る。

 一方、ヤンマーホールディングスは無人で自動運転する「ロボットトラクター」を10月に発売。人が乗り作業の一部を自動化するトラクターと連動させて使えば、作業時間を4割短縮できるとみている。北海道で数件の引き合いがあるという。

 走行データを分析し、ソフトウエアの修正など試行錯誤を積み重ねて商品化につなげた。通常の農機に自動運転機能を後付けできるようにして、市場の広がりに応じて普及させる狙いだ。

 井関農機が開発したのは水田を直進し、稲を真っすぐに植える「直進アシスト機能」を搭載した田植え機。西日本地域などでの使用を想定した新型機を投入する。先行発売した機種も売れ筋となり、同社は「ICT化の波が来ている」(三輪田克志販売企画推進部長)と手応えを感じる。

 全地球測位システム(GPS)の位置情報を使い、ステアリングを微調整して進むロボット農機。普及を後押しするのは技術革新だ。日本版GPS構築を目指す準天頂衛星「みちびき」による高精度の位置情報を利用できるようになり、あらゆるモノがネットにつながる「IoT」の普及でセンサーなどが低価格化するのも追い風となる。

 海外では大手の米ディアが米国の広大な農地を自動走行する農業機械の開発を手掛ける。17年にインドのマヒンドラ&マヒンドラも商用化を目指すロボットトラクターを発表するなど、農業でも自動化が大きな潮流となりつつある。

 日本でも政府が20年までに遠隔監視下でロボット農機を使った遠隔農業を実現させる方針を掲げる。ただ、米国などに比べて大規模農場が少ない日本では自動運転のメリットも実感しづらい。農地間の移動や農機の出入庫に伴う公道移動の自動化にもハードルがある。

 今後はクラウドを用いた営農管理などのサービスや機械間通信を生かした効率化など、ロボットの実力を引き出す技術の確立が求められそうだ。(伊藤大輔、牛山知也)

操縦レバーを離していても自動で旋回や刈り取りをこなす
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2018/7/2 12:00
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO32487330S8A700C1XA0000/