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コラム
2018年8月1日 / 04:18 / 15時間前更新
コラム:プライバシー保護でライバルに水をあけたアップル
Robert Cyran
[ニューヨーク 31日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 米アップル(AAPL.O)がプライバシー保護を武器に他社と水をあけている。第3・四半期(4─6月)決算は高額な「iPhone(アイフォーン)」の販売が好調で、アプリ関連サービスも急拡大した。広告ではなくハードウエアを売る戦略が同社の弱みに見えた時期もあったが、フェイスブック(FB.O)の苦境を尻目に、アップルは強固なデータセキュリティーをブランド力と収益性の向上に結び付けている。

iPhoneの販売台数は4130万台と、前年同期比1%の増加にとどまった。しかし1000ドルを超える高額機種の「iPhone X(テン)」が多く売れたことにより、売上高は20%も増えた。

加えてアプリ販売およびアプリ内課金が増加。モバイル決済サービスの「アップルペイ」、音楽配信「アップルミュージック」といったサービスの利用も増え、これらの収入は31%増の95億ドルとなった。

こうしたサービスは株主にとって「二度おいしい」。全体の利益を115億ドルに押し上げたほか、iPhone自体よりも安定的かつ早い増収をもたらすため、株価も上昇する可能性がある。事実、この日の決算発表後1時間でアップル株は2%以上上昇し、株式時価総額は1兆ドルの大台に迫った。

同社がユーザーのプライバシー保護を重視していることが、こうした傾向に少なくともある程度は寄与している。フェイスブックとグーグルの親会社アルファベットがここ数年、目を見張るような成長を遂げたことで、オンライン広告市場に出て行かないアップルの慎重姿勢は残念、と受け止められていた。しかしここにきて、ターゲット広告を巡る不祥事が相次ぎ、投資家はソーシャルメディア事業の持続的成長を疑問視するようになった。こうした環境下では、他社と一線を画すアップルのビジネスモデルは独自の強みだ。

ユーザーのデータ保護は売上高の数字に直接的には表れない。しかしセキュリティー対策同様、ブランド力の強化にはつながった。ソフトウエアとハードウエアの管理、そして販売するアプリの選別に注力した結果、アップルはマルウエア(有害なソフトやコード)を少なく抑えることに成功し、ひいてはiPhoneが高級製品であるとのイメージを生み出した。ターゲット広告やデータ侵害に対する消費者のいら立ちは、ハードウエアのセキュリティー保護ほど重要な問題にはなっていない。しかし関連する不祥事が増えるたびに、アップルのセールスポイントは大きくなっている。

●背景となるニュース

*アップルが31日発表した第3・四半期(4─6月)決算は、売上高が前年同期比17%増の533億ドルで、トムソン・ロイターI/B/E/Sのアナリスト予想526億ドルを上回った。利益は32%増の115億ドル。1株当たり利益は2.34ドルで、予想を16%上回った。

*iPhoneの販売台数は4130万台と、前年同期の4100万台を上回った。