皮膚病、脳機能に悪影響 三重大研究チーム解明
2018年8月22日
http://www.chunichi.co.jp/article/mie/20180822/CK2018082202000031.html

 全身に紅斑が出る尋常性乾癬(かんせん)やアトピー性皮膚炎などの皮膚病は、血管を狭め、皮膚だけでなく脳機能にも悪影響を及ぼすことを、三重大の研究チームが突き止めた。同大大学院医学系研究科の山中恵一教授(皮膚科学)は「皮膚炎は脳の病気のほか臓器の病気などにも強く影響すると分かった。適切な治療を積極的に受けることが重要だと周知を図っていきたい」と話している。
 研究チームによると、アトピー性皮膚炎などの皮膚病患者は増加傾向。脳血管疾患や心筋梗塞を発症する頻度が高い統計があり、乾癬患者の寿命は平均より六年短いとの結果も米国の研究チームにより示されている。
 皮膚病患者の中には、副作用があるとの間違った認識によってステロイド剤を塗ることを嫌がったり、命に別条がないと判断した医師が放置したりする場合があり、適切な治療の重要性の周知が課題。皮膚病と脳の病気との関連が分かったことで、適切な治療を促していく考えだ。
 今回三重大の研究チームは、同大が独自に作成した皮膚炎の症状を再現させたマウスを使い、脳の主要な動脈を測定すると、血管の直径が全ての部位で約半分まで細くなっていた。体内の細胞の働きを断層画像で診る「PET検査」でマウスの脳を調べたところ、脳機能の低下が見られた。
 慢性的な皮膚炎では、炎症がある部分から、炎症反応に影響する物質「サイトカイン」のうち炎症を促進させるものが過剰に生まれている。マウスにこのサイトカインを中和する抗体を投与すると、脳血管の太さが元に戻ることも確認できた。
 これらのマウスでの研究結果から、慢性的な皮膚炎は人間の場合でも全身性の炎症の他、血管が狭まり記憶力など脳の機能低下も引き起こす可能性があることが分かった。皮膚病は心臓、肝臓、腎臓など内臓機能に影響することも約三年前に三重大の研究チームによって明らかになっている。
 放置すると、脳や臓器の重大な病気につながりかねないため、山中教授は「最近ではどのサイトカインがどの病気に影響するのかも分かってきた。専門医に相談して、新しい治療法も含め適切な治療を受けるようにしてほしい」と呼び掛けている。
 研究成果は米学会誌「ジャーナル・オブ・インベスティゲイティブ・ダーマトロジー」電子版に掲載された。
 (鈴木里奈)