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目の検査でアルツハイマー病早期発見の可能性、米研究
2018年8月24日 15:56 
発信地:タンパ/米国 [ 米国 北米 ]

【8月24日 AFP】目の検査の技術向上により、アルツハイマー病の症状が現れるかなり前に医師らが患者に診断を下すことが可能になる日が来る可能性があるとの研究論文が23日、米国医師会(AMA)発行の医学誌「JAMA眼科学(JAMA Ophthalmology)」に発表された。

 論文によると、研究チームは大半の眼科医院ですでに利用されているのと同類の検査機器を用いて、調査参加者が30人の小規模なサンプル集団でアルツハイマー病の兆候を検出したという。

 研究では、年齢が70歳代半ばでアルツハイマー病の表だった症状がみられないこの30人に、PET検査や髄液抽出などの検査を受けさせた。

 検査の結果、アルツハイマー病に関連するタンパク質のアミロイドやタウの濃度上昇が、参加者全体の約半数で確認された。これは、このグループの人々がゆくゆくは認知症を発症すると考えられることを示唆している。

 さらに、研究チームはこのグループで網膜の薄化がみられることを発見した。この薄化は、専門家らが過去に実施した、アルツハイマー病で死亡した患者の病理解剖ですでに確認されていた。

 研究責任者の一人で、米ワシントン大学(Washington University)のラジェンドラ・アプテ(Rajendra Apte)教授(眼科学・視覚科学)は「アミロイドやタウの濃度上昇がみられる患者グループで、網膜の中心部に顕著な薄化を検出した」と説明する。

「人間は皆、血管のない小領域が網膜の中心部に存在する。この部位は最も正確な視覚に関与している。今回の研究では、前臨床期アルツハイマー病の人々でこの血管のない部位が有意に拡大していることを発見した」

 だが、網膜の薄化がみられる参加者がアルツハイマー病の発症へと進行したかどうかについては、今回の研究では明らかにされなかった。

 英研究機関「アルツハイマー・リサーチUK(Alzheimer's Research UK)」のサラ・イマリシオ(Sara Imarisio)氏は「今回の研究で用いられた目の検査法は、比較的手早く実行でき、安価で、体に負担がかからない」と指摘した。

■早期発見のメリットは?

 専門家らによると、アルツハイマー病による脳の損傷は、記憶障害の兆候が現れるより最長で20年も前から始まる可能性があるという。

 認知症の中でも最も症例が多いアルツハイマー病は、治療法が存在しない。だが、より早期に発見することで、薬剤やライフスタイル改善などの介入によって病気の進行を食い止められる可能性がある。

 医師らは現在、アルツハイマー病診断の助けとするためにPET検査や腰椎穿刺(せんし)などを利用しているが、これらはどちらも高額で体に負担がかかる検査技術だ。

 今回の研究で用いられた技術は「光干渉断層血管撮影(OCT-A)」と呼ばれる種類のもので、目の中を光で照らし、網膜や視神経の厚みを測定するのに広く使用されている。

 網膜と中枢神経系は相互に接続されているため、脳内の変化が網膜の細胞に反映されている可能性があると、研究チームは指摘している。

 論文の執筆者らは、この技術がより大きな母集団で正しく機能するかどうかを確認するためにさらに研究を重ねる必要があることは認めつつも、40歳代から50歳代の人々を対象としたスクリーニング検査の助けとなる日が来る可能性があると期待を寄せている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN