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トリチウム水の処分で公聴会 2日目も海洋放出に意見相次ぐ
2018年8月31日 18時21分福島第一

東京電力福島第一原子力発電所にたまり続けている「トリチウム」という放射性物質を含む水の処分をめぐり、国の有識者会議は一般から意見を聞く公聴会を2日目の31日は福島県と東京で開き、海に放出する処分方法に反対し、タンクに保管し続けるべきだなどとする意見が相次ぎました。

福島第一原発で出る汚染水を処理したあとの水には、取り除くのが難しい「トリチウム」という放射性物質が含まれていて、原発の構内でおよそ92万トンが保管され増え続けています。

このトリチウムを含む水の処分を議論する国の有識者会議は、海への放出や地中への処分など5つの方法について意見を聞く公聴会を30日から開催しています。

2日目の31日は、郡山市と消費者の立場からも意見を聞くため東京都内でも開かれました。

このうち、郡山市の会場では福島県三春町の女性が「広く国民や海外からも意見を聞くべきで、この公聴会だけで国民の意見を聞いたというアリバイにしないでほしい」とし、全国で公聴会を開くべきだと述べました。

また、処理したあとの水にトリチウム以外の放射性物質も残っていることについて「これまで説明がなく、公聴会の前提が崩れた」との指摘も出されていました。

午後からは東京でも開かれ、こちらの会場では意見を表明する人が原子力に反対の立場の市民団体やNPO法人の代表などが多く、トリチウムを処理した水はタンクに保管し続け、放射線量が下がることや放射性物質を取り除く技術開発を待つべきだなどと述べ、海への放出に反対していました。

有識者会議は、公聴会で出された意見などを参考に今後の対応の検討を進めることにしています。

被害者の立場で考えて

福島県郡山市で行われた公聴会で、トリチウムを含む水を海に放出する処分方法に反対する意見を述べた福島県三春町に住む66歳の女性は、「東京電力や国という事故を起こしたほうの立場ではなく、被害者の立場で考えてやってほしい。それを思えば、絶対に海に流せないはずだ」と話していました。

また、公聴会が福島県内と東京都内の合わせて3か所での開催となったことについて、女性は「これは福島だけの問題ではないので、公聴会は誰でも参加できるような形にして各地でやるべきだと思う」と話していました。

傍聴した人は

公聴会を傍聴した郡山市内に住む68歳の男性は、「海に流すのではなく、トリチウムを含む水を貯蔵するという発言者からの提案はよかったと思う。その提案を委員会の方々が真摯(しんし)に受け止めて結論が出ることを期待しています」と話していました。

また、東京から訪れた70歳の男性は「最後に発表した人が委員に対して質問をする一幕があり、こういう相互のやり取りが大事だと思いました。公聴会で出された福島の人の思いを共有してもらい、なんとかいい方向に向かってほしい」と話していました。

具体的な議論につなげることが重要

トリチウムという放射性物質を含む水の処分について、国の有識者会議の委員を務める立命館大学の開沼博准教授は、海への放出に反対する意見が相次いでいることについて、「まだいろんな不信感や不満があることがあぶり出されたと思っている。反対意見があるのは当然で、これを形式的に受け止めるのではなく、具体的な議論につなげることが重要だ」と述べました。

また、この時期に公聴会が開催されたことについては、「震災と原発事故から7年がたち、放射線の問題や経済的な問題、科学的な問題を議論する機会自体がなくなり、風化が進んでいる状態がある。そういう意味ではトリチウムの問題に限らず、震災や原発事故のことに正面から向き合う重要な機会になった」と指摘しました。

そのうえで、「公聴会が3か所では足りないという意見もあったが、当然の感覚で、今回の公聴会が具体的な枠組みを議論するスタート地点になればいいと思っている」と話していました。