台風21号の強風にあおられてタンカー「宝運丸」(2591トン)が関西国際空港の連絡橋に衝突した当時、周辺海域に約50隻が停泊し、宝運丸を含む9隻がいかりを下ろしたまま漂流していた可能性の高いことが、第5管区海上保安本部への取材で明らかになった。宝運丸など複数の船舶が、荒天時に推奨される避難海域に出ていなかったことも分かった。5管は台風への対処方法に問題がなかったか調べている。

 5管などによると、宝運丸は4日午後1時40分ごろ衝突。当時、周辺で停泊する約50隻のうち、9隻がいかりを下ろしたまま流される「走錨(そうびょう)」状態だったとされ、5管は船舶電話でそれぞれに注意喚起していた。宝運丸以外の8隻は事故につながらなかった。

 走錨による事故を防ぐため、5管は関空島の岸壁から5.5キロ以上離れて停泊するよう、運航会社などに呼びかけている。ただ法的な義務はなく、最終的な判断は船長に任されている。事故直前、宝運丸は岸壁から南東約1.6キロで停泊していたが、他にも複数の船が近くにいたという。

 宝運丸を運航する「鶴見サンマリン」(東京都)によると、衝突直前、タンカーに設置された風速計が上限の秒速60メートルを超えていた。走錨状態のまま停泊地点から北に約2キロ流されて衝突したが、風上の南側に向けてエンジン全開状態で対抗していた。5管は衝突回避行動などについて船長から事情を聴いている。

 同社は停泊地について、「関空島の近くは風を防ぎやすい海域で、海底も粘土質でいかりがかかりやすいと考えた。水深も浅い方がいかりが安定するため、5.5キロ以上離れた場所は逆に危険だと船長が判断した」と説明している。【竹田迅岐】

毎日新聞2018年9月11日 12時34分(最終更新 9月11日 13時18分)
https://mainichi.jp/articles/20180911/k00/00e/040/218000c