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日本の砂浜大ピンチ 温暖化で6割の沿岸で完全消滅のおそれ
2018年12月12日 23時02分環境

海水浴やサーフィンなどで私たちに身近な砂浜が危機にひんしています。地球温暖化による海面上昇の影響で、最悪の場合、今世紀末までに日本の9割の沿岸で砂浜の面積が半分以上減るほか、6割が完全に消えるおそれのあることが国の研究機関などの分析で分かりました。

これは、国連のIPCC=「気候変動に関する政府間パネル」が4年前の平成26年に公表した報告書のデータなどを基に、国立環境研究所や大学など28の機関で作る研究グループが分析したものです。

それによりますと、今後、世界の平均気温が約4度上がると、日本の沿岸では、今世紀末までに海面が最大で60センチ上昇し、これに伴って、最悪の場合、全国77の沿岸のうち、96%に当たる74の沿岸で砂浜の面積が、今より半分以上減る可能性のあることが分かりました。

さらに、60%に当たる46の沿岸では、砂浜の消失率が100%に達し、完全に消えるおそれがあるということです。

国土交通省によりますと、全国各地の砂浜では、戦後の開発や台風による高波などの影響ですでに消失や減少が起きています。

このうち、神奈川県の湘南海岸では、例えば茅ヶ崎市で平成17年までの50年余りの間に、海岸線が陸側に最大で50メートルも後退したほか、二宮町では、かつて県の海水浴場に指定された幅30メートルの砂浜があり、毎年、海水浴で多くの人が訪れマラソン大会も開催されていましたが、11年前の平成19年以降は、いずれもできなくなっています。

こうした地域では、砂を再び増やす工事が行われていますが、温暖化による将来の減少や消失を見据えた対策はまだ進められていません。

このため専門家からは、海水浴などの観光面に加え、防災や生態系の維持など砂浜が果たしている重要な役割を認識し、対策を強化すべきだという意見が出ています。

最悪シナリオを可視化すると…

国立環境研究所などが行った分析では、将来の気温の上昇の度合いなどに応じて、複数のシナリオを作成し、将来の砂浜の消失率を計算しています。

NHKは、このうち最悪となるシナリオについて、「NMAPS(エヌマップス)」と呼ばれるシステムで可視化しました。

可視化にあたっては、消失率が100%になる沿岸は「完全に消失」、81%から99%は「ほぼ消失」、51%から80%は「大幅に減少」、50%以下を「減少」と分類しました。

その結果、分析の対象となった全国77の沿岸のうち、96%にあたる74の沿岸が「完全に消失」や「ほぼ消失」、それに「大幅に減少」となり、「減少」にとどまるのはわずか3つでした。

このうち、砂浜が「完全に消失する」と予想される沿岸は、「北見」や「根室」、「三陸北」などの北日本のほか、湘南海岸を含む「相模灘」や東京の「小笠原」、「伊豆半島」や「三河湾・伊勢湾」などの東海地方、「能登半島」や「若狭湾」などの北陸、「紀州灘」や「淡路」などの近畿地方、「広島」や「岡山」、「土佐湾」などの中国・四国地方、「八代海」や「日向灘」、「有明海」、それに「琉球諸島」などの九州・沖縄と、各地に分布していて、広い範囲で砂浜が危機にひんしているのが分かります。