世界各国で導入が開始された次世代のモバイル通信「5G」。その5Gでは「SIM」にも新たな機能が追加されます。4月9日、ジェムアルトは技術説明会を開催し、5G時代のSIMカードが持つ新しい特徴を紹介しました。

SIMは携帯電話キャリアが持つユーザー情報と接続しているスマートフォンなどの端末情報を紐付けする重要なデバイス。LTEスマートフォンの多くには、「SIMカード」として内蔵されています。

▲4G LTEスマートフォンに内蔵されるnanoSIMカード

SIMカードの設計で高いシェアを持つジェムアルトは、その5Gに対応するSIMカを発表しています。ジェムアルトいわく「世界初」という5G SIMは、2019年上半期(6月)までに出荷が開始されます。

■今の5Gは「完全な5G」ではない

5Gは米国や韓国で続々と開始されていますが、これは「フル仕様の5G」ではありません。実は5Gの詳細な仕様は未だ決まっておらず、2019年末をめどに策定される「3GPP Release 16」で決定される予定です。

そして、5Gには「高速(通信速度が向上する)」「低遅延(反応速度が早くなる)」「多元接続(1つの基地局でこれまでより多くの端末を制御できる)」という3つの特徴がありますが、現在の5Gではそのうち「高速」のみしか実現できません。

なぜなら、5Gの提供開始当初は、多くのキャリアが移行期向けの仕様「NSA(ノンスタンドアロン)」を採用するから。これは、4G LTEの制御システムを用いて5Gサービスを展開するという仕組みで、日本の大手3キャリアを含め、LTEから5Gへ移行するキャリアの多くがこの方式を採用するものとみられています。

コアネットワークまで「5G化」した完全な5Gネットワークの実現は、2022年ごろとみられています。そして、ジェムアルトの「5G SIM」は、その「完全5G時代」のネットワークを見据えた仕様となっています。

■SIMの識別番号が暗号化される

SIMの1つ1つに割り当てられている識別番号が割り当てられています。4G LTE SIMでは「IMEI」と呼ばれるものです。IMEIから携帯電話契約者の情報を読み出すことはできませんが、近年では個人情報に当たる可能性があるとして、プライバシー保護の観点から課題とされてきました。

4G LTEのIMEIは電話番号と1対1の関係を持つ数字で通信時には平文(暗号化されていない状態)で送受信されます。5G SIMではIMEIに相当する「SUPI」には、暗号化の仕組みが追加されます。

5G SIMでもSIMの識別番号をネットワーク(通信キャリア)とやり取りする点は変わりませんが、SUPIそのものではなく、それを暗号化した「SUCI」を利用してやり取りします。これは特に海外キャリアのローミングを利用している場合などに、契約者個人の情報と紐付けを難しくする効果があります。

■海外ローミングがスムーズに

海外のキャリアで通信する時に使う「ローミング」も、5Gではより賢くなっています。5G SIM追加された「ステアリングローミング」は、複数のキャリアのローミングサービスが使えるときに、接続先に優先順位をつける機能。この機能があることで、安価なローミングサービスで快適なサービスを提供できるようになるといいます。

ローミングサービスは、キャリア間で接続協定を結んだ上で提供されます。ユーザーがローミングサービスを使う場合、ユーザーの契約キャリアから回線提供元の現地キャリアに支払われます。その際の料金は事業者同士の話し合いで決められており、一律ではありません。

たとえば、ある国では「エリアが狭くローミング料が安いキャリアA」と「エリアが広いがローミング料が高いキャリアB」が存在している場合に、通信事業者としてはキャリアAを優先して利用してもらいたいわけです。

ところが、LTEまでのモバイル通信では、接続先キャリアに優先順位をつける機能がありませんでした。そのため割安なローミングサービスを提供する際、「割高なキャリアB経由で接続した場合、一度接続を切ってキャリアA経由で繋ぎ直す」といった工夫を行っている事業者もありました。その場合、つなぎ直すまでの間は通信ができないため、ユーザーにとっては「安い代わりに、なかなかつながらない」状況にもなり得ます。

以下ソース先で

2019年4月13日 20時0分
Engadget 日本版
http://news.livedoor.com/article/detail/16312689/
http://image.news.livedoor.com/newsimage/stf/7/9/7979e_1186_b5f5cec696c8c5386a69ade6eba6a284.jpg