採石、販売目的お断り 有名な水晶産地「ちんの峠」
2019年05月04日 07:30
https://www.gifu-np.co.jp/news/20190504/20190504-135112.html

 岐阜県中津川市に「ちんの峠」と呼ばれる珍しい地名の場所がある。同市の苗木、坂下地区境の峠だが、付近の山中には全国の鉱物ファンに古くから知られた有名な採石スポットがあり、今でも水晶などを求めて訪れる人は少なくない。ただ、販売目的で掘削して鉱物を採集する人もいるとみられ、周辺を管理する地元の苗木財産区では「勝手に大きな穴を掘られると事故にもつながる」と節度ある行動を呼び掛けている。
 苗木周辺は「日本三大ペグマタイト」の一つに数えられる地域で、東海シニア自然大学講師の森勇一さんの著書「東海のジオサイトを楽しむ」によると、この辺りの岩石は水晶を多く含むペグマタイト(巨晶花崗(こう)岩)の割合が高く「水晶の産地として日本で最も有名な場所」。無色透明の水晶だけでなく、黒水晶や煙水晶、トパーズなども多く見つかるという。鉱物採集のガイドブックでも古くから推奨スポットとして紹介されている。
 車道から林道を歩いて登ること1時間弱。「ちんの峠」に近い林道沿いのザレ場が採石スポットで、大雨の後に崩れた斜面を目視で観察するだけでも、真っ白な石英(クオーツ)などの水晶の仲間は容易に見つけることができる。
 ただ、周辺は地元の苗木財産区の管理地。削岩機を持ち込み、販売目的で訪れる人もいるようで「掘削による鉱物採取を禁止しています」の看板が立つ。インターネットのオークションサイトにも「ちんの峠」の水晶などが出回っており、出品者に質問すると「出品自体はあまりよくないかもしれない」と出品を取り下げる人もいた。
 苗木財産区の酒井和義議長(71)は「販売目的で入るのは困る。勝手に大きな穴を掘られると事故にもつながる。研究や学習目的で入ることは拒まないので、麓にある市の鉱物博物館や苗木事務所に申し入れ、シャベルで掘る程度にしてほしい」と話している。