やっぱりニホンオオカミの骨でした――。明治期に奈良県上北山村の民家で殺され、現在大淀町教委が所蔵しているオオカミの頭骨をDNA分析した結果、ニホンオオカミの骨と確認された。これまでも骨の形態から犬と区別され、ニホンオオカミとされてきたが、最新科学でも裏付けられた。同町教委は骨の来歴調査を進める予定で、「これを機に吉野地域にオオカミブームを起こしたい」と話す。【萱原健一】

 ニホンオオカミは1905年に東吉野村鷲家口(現小川)で確認されたのが最後とされ、剥製は国内では和歌山大などの3体だけが残る。

 DNA分析した頭骨は、明治期に上北山村天ケ瀬(現西原)の民家に入って殺されたオオカミで、「吉野熊野国立公園の父」と呼ばれた大淀町出身の岸田日出男さん(1890〜1959年)が戦前に譲り受けた。前額部からのなだらかな鼻筋などの形態から、1990年に京大の研究者がニホンオオカミと鑑定していた。

 今回分析したのは、これまでもオオカミと犬のDNAの比較分析をしてきた石黒直隆・岐阜大名誉教授。頭骨から骨粉を採取し、ミトコンドリアDNAを分析した結果、塩基配列がニホンオオカミの特徴を示したという。「さらに詳細なゲノム解析を進めるが、結果は間違いない」と話す。

 大淀町教委の松田度(わたる)学芸員は分析結果に「これで一段落」。今後、3Dスキャンで頭骨の複製を作るなど後の研究に役立つ基礎データを集めるほか、岸田さんが頭骨を譲り受けた家の子孫などから、当時の経緯などを丹念に聞き取りし、骨の来歴を残していくという。

毎日新聞2019年5月29日 09時45分(最終更新 5月29日 10時28分)
https://mainichi.jp/articles/20190529/k00/00m/040/036000c
https://cdn.mainichi.jp/vol1/2019/05/29/20190529k0000m040035000p/0c8.jpg