2018年4月に実施された野中広務さんの「お別れの会」。(撮影=鵜飼秀徳、以下すべて同じ)
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■国会議員や大企業のトップさえも葬式をやらなくなった

 私は1年前、東京都千代田区にある大企業(連結社員数約5500人)の3年間の訃報通知をカウントし、解析した。すると、約95%が「家族葬」か「直葬」であった。たしかに、私が現役時代に葬式に参加した最後は2006年頃だったように思う。

 新聞の訃報欄にも変化がある。やはり、「通夜」および「葬儀・告別式」の日取りや場所が書かれておらず、かわりに「告別式は近親者で行う」との文言が添えられているのだ。

 大手紙の訃報欄に掲載される故人は、国会議員や文化人、大企業のトップなどを経験した著名人である。「公人」ですら、会葬者を集めた葬式をやらないようになっているのだ。支援者が多数存在する政治家までもが、いまでは葬式をやらない。

 2018年1月、「影の総理」と言われた元官房長官の野中広務さんが亡くなった。私も政治記者時代、野中さんにはお世話になっていたので葬式に参列したかったが、家族葬であった。3カ月後、「お別れの会」が開かれ、そちらに出席した。

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■試算で判明「家族葬は割安」はウソだった

 では、家族葬や直葬を選べば、本当にコストを抑えられるのだろうか。

 最近、雑誌の特集で家族葬や直葬が「割安」であるとの記事が目につく。しかし、そこに落とし穴がある。

 結論から言うが、最も支出が多くなるのが「家族葬」であり、その次に「直葬」だ。支出をなるべく抑えようと思えば、従来の「一般葬」を選ぶべきだ。いったい、どういうことか。

 家族葬、直葬、そして会葬者を集める形式の葬式(一般葬)のコストを試算してみたのでご紹介しよう。

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●家族葬【都内の葬儀会館で親族のみ30人程度を集めた場合】
祭壇、花、ドライアイス、枕飾り、棺、霊柩車、火葬場までのハイヤー代、霊安室代、遺体安置、葬儀会館利用料などで40〜80万円+寺院などへの布施30万円
支出額70万円〜110万円

●直葬【都内で実施した場合】
一般的な直葬プラン+遺体安置代(2日間)+火葬場への僧侶派遣代
支出額30万〜50万円

●一般葬【都内の寺院で会葬者150人程度を集めた場合】
祭壇、花、ドライアイス、枕飾り、棺、霊柩車、火葬場までのマイクロバス代、香典返しなどで計100〜130万円+寺院などへの布施30万円
支出額130万〜160万円
香典収入 参列者1人平均8000円×150人
収入額120万円
差し引き支出額10〜40万円
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 つまり、今回の各条件で試算すれば、家族葬や直葬では、費用30万円〜110万円出ていく一方であるのに対し、会葬者を集める一般葬は香典収入が見込め、コストが抑えられる傾向にある。

 葬式を華美な祭壇や演出にせず、一般会葬者を広く集めて香典を受け取り、地域の人や会社の同僚らに手伝いに来てもらった上で、レンタルスペース代がかからない菩提寺や自宅で葬式をやれば、場合によっては「黒字」になることも十分ある。

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■家族葬や直葬はかえって負担が大きくなる可能性が大きい

 そもそも葬式とは、共助の精神で成り立っている。費用・労力の両方の負担を、地縁血縁で補い合うのが、本来の葬式のあり方なのである。

 家族葬や直葬の場合、「死を知らされなかった」「葬式に呼ばれなかった」として、五月雨式に弔問客から連絡を受けるケースも少なくない。「価格表」だけで家族葬や直葬を選べば、かえって負担が大きくのしかかってしまいかねないのだ。

 安易に流行や低価格表示に飛びついてしまわないことが失敗を避ける秘訣であることは、前述の通り。さらに言えば、常に地域や親族と「死」の情報を共有し、いざという時には「困ったときはお互いさま」の精神で心を込めて故人を送ることが、大切になってくるだろう。

7/6(土) 11:15配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20190706-00029224-president-soci
★1:2019/07/07(日) 19:09:43.33
https://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1562509939/