花粉やウイルスを「水(と二酸化炭素)に変える」または「分解する」と謳ったマスクを販売していたアイリスオーヤマ、大正製薬、玉川衛材、DR.C医薬の4社に対し、消費者庁はこの7月4日、景品表示法に違反するとして、再発防止などを求める措置命令を出した。景品表示法違反とは、実際の商品より著しく優良であると示して消費者を不当に誘因したときなどに適用される。

 すでに報道等がされているので簡潔にまとめるが、この4社の内、アイリスオーヤマは措置命令が出る前に該当商品の販売を終了、玉川衛材とDR.C医薬は措置命令に従って消費者に誤解されない表現に改めるとしている。

 ところが、大正製薬だけは消費者庁に反旗を翻したのである。同社は7月4日付けのリリース「消費者庁による措置命令について」で、以下のように述べている。

〈今回の措置命令の指摘事項は、当社が消費者庁に提出した科学的根拠を全く無視した内容で、合理的なものでないと考えております。今後、法的に採り得る対応・措置を検討中です〉

 大正製薬は消費者庁に対し、「法的措置を検討する」という。

◆花粉やウイルスを「分解する」とはどういうことか

 ところで、この花粉やウイルスを「水(と二酸化炭素)に変える」、あるいは「分解する」マスクとはいったいどんな商品なのか。

 これはマスクの中に酸化チタン(光触媒)という素材を含む層を挟み込み、この光触媒の効果で花粉やウイルスを酸化して機能を失わせるという触れ込みの商品である。4社とも素材の名称が異なり、組成にも違いがあると考えられるが、酸化チタン(光触媒)を利用しているという点は共通している。

 酸化チタン(光触媒)は、光のエネルギーで水を酸素と水素に分解し、さらに酸素から活性酸素を生じさせる性質をもち、この活性酸素がたんぱく質など有機物を分解するとされている。すでにさまざまな分野で応用されており、便器やビルの外壁などの汚れを分解するコーティング剤などに使われ、東京駅八重洲口の「グランルーフ」(全長230mの膜構造の大屋根)にも酸化チタン(光触媒)コーティングが施されている。

「水に変える」というのは、花粉やウイルスなどの有機物を活性酸素で最後の最後まで酸化していくと、最終的に水や二酸化炭素などになるという意味である。ただし、「水(と二酸化炭素)に変える」と謳っているのは大正製薬を除く3社で、措置命令が出た大正製薬の『パブロンマスク365』のパッケージには、表面の中心部に大きく〈ウイルス 花粉(アレルゲン) 光触媒で分解! 太陽光、室内光でも〉と書かれていて、水と二酸化炭素に変えるという表記はない。

 これらのマスクについて、以前からネット上では科学者や医師などから以下のような疑問が投げかけられていた。

(1)酸化チタン(光触媒)という素材に花粉やウイルスを分解する力があるとしても、実際の製品にその効果があるのか。

(2)花粉やウイルスの組成には、炭素(C)や水素(H)だけでなく、硫黄(S)や窒素(N)なども含まれるので、花粉やウイルスが分解されるとしたら、水や二酸化炭素だけではなく、硫黄酸化物や窒素酸化物なども生成するから、「花粉やウイルスを水に変える」という表記は誤解を招くのではないか。そもそも実際の製品で本当に水や二酸化炭素になるまで化学反応が進むのか。

(3)酸化チタン(光触媒)による化学反応のスピードは、花粉やウイルスを瞬時に分解するほど速くはなく、仮に分解するとしてもマスクのフィルターが吸着した花粉やウイルスをゆっくり分解することになるはず。しかし、吸着した時点でマスクは役目を果たしているわけで、分解する意味があるのか。

◆消費者庁が「問題視」した点

以下ソース先で

2019.07.28 07:00
https://www.news-postseven.com/archives/20190728_1418424.html?DETAIL
https://news-postseven.kusanagi-cdn.com/wp-content/uploads/2019/07/jpp031939524.jpg