私って、なんか周りと違う。そんな、違和感や生きづらさを小さいころからずっと抱えてきた。自分はいつまでも不幸なんだと思っていた。
でも、“あのとき”から私は変わり始めた。そして今は、胸を張って幸せだって言える。長い間ひきこもってきた、発達障害のある女性の話です。

世界になじめず、ひきこもる毎日

宇樹義子さん
「物心ついた時には、何か世界になじめないっていう感じがありました。『お前は我慢がきかない』とか『甘えてる』と言われるから、ずっとそう思い込んできて、必死に努力するんだけれど、体がついていかなくて体調を崩してしまう。生きているだけで疲れてしまうというか…。そんな毎日でしたね」
そう話すのは、発達障害の当事者で、ライターの宇樹(そらき)義子さん(39)です。幼いころから、違和感の理由がわからないまま、頑張り続けるという毎日を長年送ってきたと言います。

体調を崩しながらも無理をして、大学受験まではなんとか乗り切りましたが、大学生になって生活が自由になったことがかえって災いし、そのままひきこもってしまいます。

就職活動では、筆記試験は通っても面接で落ちることの繰り返し。「自分は社会に適応できない、社会って怖い」と思い詰めるようになります。

次第に、午後遅くに起きて、部屋でインターネットをひたすら見続け、明るくなるころに寝る、昼夜逆転の生活を送るようになっていきました。

宇樹さんは、当時の生活をこう振り返ります。

ひきこもっていた当時の宇樹さん
(宇樹さん)「同じ年代の周囲の人たちと比べて、やり残していることがものすごくいっぱいあるけれど、自分には全く手をつけられる自信がない。 やらないといけないのに、という圧倒的な焦りばかり。周囲からは責められるし、罪悪感もあって、つらい毎日でした」

発達障害かも?の気付きがすべてを変えた
大きな転機となったのが、30歳のころ、しんきゅう院に行った時にかけられたことばでした。
(宇樹さん)「問診の時に先生から『エアコンの動作音につられて、声が大きくなったり小さくなったりしている。もしかしたら耳が聞こえすぎな感覚過敏なのかもしれない。そうだとしたら、発達障害の可能性もあるのでは?』と言われたんです。
早速ネットや本で調べてみると、発達障害の特性として紹介されていることが、自分にぴったりと当てはまって、ものすごく驚きました」
注意力が散漫だったり、他の人にとって当たり前のことを説明してもらわないと分からなかったり…。小さいころから持っていた「なんかおかしい」というモヤモヤが、いっぺんに氷解していったと言います。

宇樹さんは、この時のことについて、視覚や聴覚に障害があったヘレン・ケラーが何百回目かに水に触れたときに「ウォーター!!」と叫んだ瞬間のような気付きだったと話します。

助けを求めることも“スキル”
宇樹さんはその後、心療内科を受診し、発達障害のうち、「高機能自閉症」(ASDの1つ)の診断を受けます。32歳になっていました。
(宇樹さん)「診断を受けた当初は、正直、落ち込んだ面もありました。でも、自分は努力が足りないと思い込まされて、つらい思いをしてきたけれど、こういう特性だったんだって理解できました。
幼稚園とか、そのぐらいのころにわかっていればよかったな、そうすれば無理をして体調を崩したりせずに済んだのにとも思いました」

診断を受けたあと、支援を求めて「障害者就業・生活支援センター」に電話で相談。すぐに、数人のスタッフが支援に取り組んでくれました。

最初は障害者向けの就労施設を紹介されたものの、うまく合う施設が見つからず、その先のステップとして、障害年金を申請するための書類作りのサポートをしてくれました。そのかいあって年金を受給できるようになり、回復への道を歩み始めました。
(宇樹さん)「助けを求めることも、一つのスキルだと思うんですよ。誰かに手を借りたり、迷惑をかけたりすることは、恥ずかしいことでも何でも無い。支援につながることができた今では、そう思っています」

続きソース
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191119/k10012181921000.html