少子高齢化により、空き家の増加や地域の過疎化が社会問題化している。
その象徴といえるのが郊外型住宅団地「ニュータウン」だ。経済成長期に庶民のマイホームの夢をかなえる場として、戸建て型・集合住宅型を含め全国で開発されてきたが、
その多くが今、往時の活気を失い、高齢化や人口減少など「オールドタウン」と称したほうがよい状況になりつつある。

そのため、そこに立地する住宅や土地は、「負動産」など称され一般的には魅力がないように思われがちだ。
だが、見方を変えれば、ニュータウンは学校や公園など居住インフラがすでに整備された理想的な住環境といえる。

若い世代を呼び込めればにぎわいが生まれ、地域活性化につながる。
ニュータウン再生が可能なら、今後の地域社会の形成にあたってよい影響が期待されるからだ。

本稿では、かつてニュータウン開発を行った事業者がその再生に取り組む事例を紹介し、その成果と今後どのような成果が期待されるかについて紹介する。

■超高齢化で街の維持が困難に

神奈川県横浜市栄区に「上郷ネオポリス」というニュータウンがある。
1970年に大和ハウス工業が開発を始めた戸建て団地だ。
鎌倉市との境にあり、大変緑豊かな立地である。現在は868戸に約2000人(2019年9月現在、上郷ネオポリス自治会調べ)が居住している。

注目すべきは約50%(2017年9月現在、横浜市政策局統計情報課調べ)という高齢化率だ。
全国の高齢化率は平均27.7%、横浜市では平均24.0%(いずれも2017年)であることを考えると、上郷ネオポリスは超高齢地域といっていい。

高齢化は現地にさまざまな問題を生み出している。ネオポリス内にあった商店の閉店により買い物の利便性が著しく低下しているほか、
同時進行した少子化により小学校(旧横浜市立野七里小学校)が廃校している。要するに、街の維持が難しい状況となっているのだ。

さて、その一画に10月29日、「野七里(のしちり)テラス」という施設がオープンした。
「サチテラス」と呼ばれるコンビニ(ローソン上郷野七里テラス店)、路線バスの待合所の機能も有するコミュニティー拠点「イマテラス」が入っている。

施設は地域住民から募集されたボランティアにより運営され、ローソンの店長・従業員も地域の方々が雇用されている。
ボランティアには80歳代の方もいるという。ここを拠点とした移動販売も行われている。

建物内外に40以上の席が設けられており、日中はご高齢の方々が主に集い、夕方からは小学生を含む若い住民の方の姿も見られ、
その様子から野七里テラスが幅広い世代の集いの場になっていることがうかがい知れた。

そもそもの始まりは、大和ハウス工業が2014年から開始した住民との意見交換にある。
以降、「まちづくり協定」の締結、大学(東京大学、明治大学)や高齢者住宅協会も加わった「まちづくり協議会」の発足などを通じて、施設の実現にこぎ着けたものだ。

2017年には全住民を対象とした「全戸住民意向調査」を実施。その中で「買い物・交通の不便」や「高齢者の見守りや支え合い」など、
街のあり方の問題点や要望が浮き彫りになり、それが野七里テラスに反映されている。

https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20191214-00317979-toyo-soci&;p=2
2019年12月14日 07時40分 東洋経済オンライン