https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00122/031200005/


新型コロナのパンデミックで避けたい未来、医療崩壊のイタリア


大西 孝弘
ロンドン支局長
2020年3月12日

全3015文字

イタリア政府は3月11日、新型コロナウイルスの感染者が1万2462人、死者は827人になったと発表した。致死率は6.6%で他国より突出して高く、修羅場と見られた中国・武漢より高い。重症の感染者に医療現場が対応しきれず、医療崩壊が起きているようだ。

 3月10日朝からイタリアの街の空気は一変した。それまで新型コロナウイルスの感染者が増えていたものの、前週末まではイタリア人の受け止め方は様々だった。「新型コロナで正念場のイタリア、人口の約4分の1を『封鎖』」で書いたように、息抜きのために散歩やジョギング、公園に出かける人も多かった。

 だが、コンテ伊首相が9日夜に、10日から移動制限を北イタリアから全土に拡大すると発表。国民に外出を控えて自宅で過ごすように要請し、「国民全員が協力して、厳格な規制に対応してほしい。私たちにはもう時間がない」と訴えかけた。飲食店は営業時間が午前6時から午後6時に制限され、客も1メートル以上の間隔を保たなければならない。

 移動制限を打ち出した後は、街の人出が激減。道路や公園などがガラガラになった。ミラノ在住の日本人は、「出かけるのも気が引ける」と話す。スーパーマーケットは混乱を避けるために入場制限を実施しており、その外では列ができていた上に、1メートル以上の間隔を空けて並んでいた。

 社会的な混乱も起きている。イタリア政府の規制によって、刑務所の受刑者が面会を禁じられたことに怒り、イタリアの20カ所以上の刑務所で暴動が発生。AFP通信によると、北部の刑務所では受刑者が屋上を占拠して抗議活動をしたり、刑務所の外で受刑者の家族が激しく詰め寄ったりした。中部では受刑者が刑務所を占拠し、南部の刑務所では大規模な脱走が起きた。
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