47歳男性「悪化するまで驚くほど速い」 再発不安拭えず、退院後も自主隔離
毎日新聞 2020年4月17日 21時35分(最終更新 4月17日 21時35分)

 新型コロナウイルスの感染者が1万人を超えた。発症すれば高熱が続き、最悪のケースでは死に至る例も少なくない。「妻や子どもにうつしてしまうのではないか」「悪化するスピードが驚くほど速い」。感染者は不安や恐ろしさを語る。

 愛知県の男性会社員(47)に関節痛などの症状が出たのは3月20日のことだった。38度以上の高温が続き、料理の味も感じられなない。23日、勤務先から同僚が感染したとの連絡を受け、不安を感じた。その同僚とは、背を向け合った50センチほど離れた席で仕事をしていた。

 PCR検査(遺伝子検査)を受けると25日になって保健所から陽性判定を伝える電話があった。同僚とは1日に数回世間話を交わす程度。本人もマスクをかけ、消毒を徹底してきただけにショックが大きかった。

 その日に病院の専用個室に収容された。持ち込めた私物は着替えとスマートフォンだけ。室内にはウイルス漏えいを防ぐため室内の気圧を下げる減圧器が設置されていた。「ゴー」という大きな音が響いていたが、次第に慣れたという。

 医師や看護師ら医療スタッフは防護服に身を包んで対応した。抗インフルエンザ薬などの投与はなく、解熱剤の服用のみ。食事のたびに検温し、1日1回は血中酸素濃度を測定した。

 入院中、入浴室や洗濯スペースに出入りすることはできたが、あらかじめ使用する時間帯を伝える必要があった。他の患者と鉢合わせしないためだ。看護師からは「早く入院できて幸いだった。今後は病床が足りず医療崩壊しかねない状況」と明かされた。男性は2回のPCR検査で陰性と判断され、8日に退院した。

 男性は妻(42)と生後10カ月の長男の3人暮らし。家族は陰性だったが、男性は帰宅後も家族と別の部屋で過ごすなど「自主隔離」を続ける。再発する不安は消えない。「注意しても感染を防げなかった。予防するには人と会わないことを徹底するしかない」

荷物受け取りも× ホテル生活「相当ストレス」

 症状が軽くなり、ビジネスホテルで過ごす感染者もいる。都内在住の男性(39)は15日から東京都が借り上げたホテルで暮らす。体はいたって元気だが、PCR検査で2回の陰性結果が出るまでホテルを一切出られない。「相当ストレスがたまっている」と語る。

 感染後、男性は9日間にわたって入院したが、熱が下がると救急車両でホテルへの移動を促された。

 「移動の10分前にいきなり病院スタッフにホテルに行くよう言われた」と振り返る。到着すると「食事は1階ロビーに取りに来て」「外部からの荷物受け取りはできない」と記された説明書を渡された。病院では差し入れの受け取りは許されていただけに驚いた。部屋はシングルルーム。感染防止のためか、布団やシーツは退院まで一度も洗わないと伝えられた。「検査結果が出るまでこの部屋にずっといるのは相当つらい」

 男性は発症後、闘病の様子を動画投稿サイト「ユーチューブ」で配信する。「感染に不安を感じる人も多い。実際に治療している自分が発信することで、必要な情報が届けばいい」と思いを語る。【遠藤大志】

https://mainichi.jp/articles/20200417/k00/00m/040/292000c.amp