トヨタの最高級車レクサスの暴走による死亡事故で、自動車運転死傷処罰法違反(過失運転致死)などで起訴された元東京地検特捜部長の石川達紘弁護士(80)に対する初公判が2月17〜日午後、東京地裁で開かれた。

 車載の事故記録装置などをもとに「運転操作を誤った」とする検察側に対し、石川側は「車に不具合があり勝手に暴走した。(石川の)過失はなかった」と無罪を主張。石川が無罪となれば、トヨタの技術の粋を凝らしたレクサスに何らかの不具合があったことになり、トヨタのブランドは大きく傷つく。

 かつて「特捜検察のエース」と呼ばれた男と日本ナンバーワンの巨大企業との法廷闘争が始まった。(敬称略)

「安全運転サポート車」による事故

 事故を起こしたレクサスLS500hは、トヨタのレクサスシリーズの最高級車。17年10月にフルモデルチェンジで発売された。ハイブリッド仕様で、アクセサリーをフル装備すると価格は1500万円を超す。石川は、別のタイプのレクサスから乗り換えたばかりだった。

「先進の予防安全技術」がこの車の「売り」だった。政府が交通事故防止対策の一環として普及啓発している「安全運転サポート車」で、自動ブレーキやペダル踏み間違い時の加速抑制装置など安全運転を支援する装置を搭載していた。

「どうやってもアクセルペダルにもブレーキペダルにも届かなかった」

 石川は改めて東京地検に、事故車を運転していた状況を再現する実況見分を求めた。地検は、要請に応じ、警視庁を指揮して翌19年1月24日、東京都交通局都営バス品川自動車営業所港南支所で実況見分を実施した。

 警視庁の捜査員は、事故車と同型のレクサスLS500hを用意。運転席の座席の位置を、警察で保管している事故車両の座席と同じ位置に調整。事故車の座席にあったのと同程度の厚さの座布団も用意したうえ、石川を座らせた。

 石川によると、右足をドアに挟んだ状態で、両手でハンドルを握ることは可能だったが、左足はどうやってもアクセルペダルにもブレーキペダルにも届かなかったという。

「事故車の座席位置に座った瞬間、事故前に座席を後ろに下げ少し背もたれも倒していたことを思い出した。前傾して運転する癖があり、停車して時間があると、いつも、リラックスするためにそうしていた」と石川はいう。

警視庁側は、この事態を予期しておらず、あわてたようだ。石川の右足をドアにはさみ、前のめりになった姿勢にしたり、事故時に履いていた靴を改めて装着させたりしたが、それでも届かなかった、と石川は振り返る。警視庁側は、足の届かない場面を含めて写真を撮影したという。

 事実が固まったとして石川が帰ろうとしたところ、捜査員が100メートルほど追いかけてきて、再度、石川は車に乗せられ、今度は普通の座席位置で写真を撮った。当然、左足はアクセルペダルに届いた。
https://bunshun.jp/articles/-/35112

#2 
レクサス暴走致死事件 元特捜検事が「左足でアクセルを踏み続けることは可能だったか」
https://bunshun.jp/articles/-/35138
へ続く