新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出の自粛や休業の要請をめぐって、応じていない人や店舗があるなどとして、警察や行政に通報したりSNSで指摘したりする行為はインターネット上で「自粛警察」や「自粛ポリス」などと呼ばれ、議論となっています。

NHKは、こうした人たちに取材しました。
このうち、小売店の人出の多さを撮影しSNSに投稿をしたという30代の男性は、「自粛警察」と呼ばれるような行為をしたつもりはないとしたうえで、「人が少なくなったところばかりを取り上げるマスコミに対し、利用者が増えている場所があり、実態とは違うということを指摘したかった」と話しています。

また、ネット上に感染に関するうわさを書き込んだという人は「みんなに広がればもっと自粛など危機感を持たせられるという意味を込めてツイートした」と話していましたが、うわさとなった情報のでもとなどの詳細は分からなかったとしています。

一方、コンビニエンスストアでマスクをせずに電話をする男性を見かけ地元の自治体に通報したという高齢者施設に勤務する30代の男性は「施設で暮らす高齢者に感染を広げまいと細心の注意を払う中、対策を取っていないように見える人が本当に許せなかった」としたうえで、「『自粛警察』と呼ばれる行為に全面的に賛成はできないが、対策を取らない人は自由に行動し、注意して生活する人ばかりが疲れてしまっている。事態をよくするには、こうするしかなかった」と話していました。

いわゆる「自粛警察」と呼ばれる行為や、感染者に関する事実無根の情報をインターネット上に書き込む行為について、社会心理学が専門で新潟青陵大学大学院・臨床心理学研究科の碓井真史教授は「ほとんどの人に悪意はなく、過剰な防衛本能が問題行動を引き起こしている」としたうえで、「行き過ぎると世の中を分断することにつながり、感染予防に逆効果となる」として、冷静な行動を呼びかけています。

そのうえで、不正確な情報が多く発信されていることについては「今は緊急事態なので真偽を確認している暇はない、疑わしいものは全部排除しなければ自分の命に関わるという切迫した気持ちで、そのまま間違った情報を発信しているのではないか」と話しています。

そして、こうした行動を抑えるための対策として「不安な気持ちを鎮めるため、まずは最新の情報から離れ、落ち着いて正しい情報を見極めることが重要だ」としたうえで「行政やマスコミもルール違反をした人をたたくような情報発信を控え、人々が納得できる伝え方を模索するべきだ」と指摘しています。


全文はソースで(2020年5月9日 20時48分)
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200509/k10012423651000.html