国内最大の公営ガス事業である仙台市ガス局の民営化を巡り、東京ガスなど4社連合が入札に応募することが分かった。東ガスは社内に専門組織を新設した。最低譲渡価格が400億円と高く、4社連合以外の事業者が応募する目立った動きはまだない。市場規模が300億円を超える同市ガス事業を手中に収めることで、4社連合は東北でのビジネス拡大を狙う。

仙台市のガス事業は宮城県内7市町村の34万戸超に供給し、公営ガスとして国内最大規模。2017年にガス小売りの全面自由化が始まり、首都圏や関西を中心に競争が激化しているが、東北は仙台市ガス局が仙台中心に市場を押さえている。

仙台市は10月29日に応募を締め切る。今回入札に応募することが分かったのは、東ガスのほか、石油資源開発(JAPEX)、東北電力、地元のエネルギー商社の4社の連合体。東北電力の樋口康二郎社長は「(電気との)相乗効果が期待できる」とし、入札に前向きな姿勢を示していた。将来的には新会社設立も視野に入れる。

入札応募に伴い東ガスは10月初旬、この案件を専門に担当する「エリア開発プロジェクト部」を新設した。連合を組む3社との調整や、譲渡後の新会社設立に向けた準備を担うとみられる。

仙台市は応募締め切り後、提案内容の審査を経て21年5月に優先交渉権者を決定し、22年度内の事業譲渡を目指す。優先交渉権者の選定は専門家らでつくる市ガス事業民営化推進委員会(委員長・橘川武郎国際大大学院教授)が審査する。最低譲渡価格は400億円と設定した。

民営化を巡っては市が05年に方針を打ち出し、東北電、東ガス、JAPEXの3社連合が唯一名乗りを挙げていたが、08年のリーマン・ショックの影響と譲渡金額などの条件面で折り合いがつかず3社連合は辞退した経緯がある。今回の入札公募は仕切り直しとなる。

日本経済新聞 2020/10/24 2:00[有料会員限定]
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