オスマン帝国は1299年に建国され、1922年に滅亡し、現在はトルコ共和国に替わっています。長期間にわたりアジアとヨーロッパの両方に領土を持つ帝国として機能しました。

 オスマン帝国の最盛期は16世紀とされ、それを体現したのは、スレイマン1世(在位 1520〜1566)であったとされます。スレイマン1世の時代のオスマン帝国についてはすでに連載第31回で述べたように、1529年にはハプスブルク帝国の帝都であるウィーンをあと少しで陥落させるまでに至るなど、ヨーロッパ人を震撼させたのです。

 では、オスマン帝国はなぜそれほどまでの強国になれたのでしょうか。今回は謎を、ユダヤ人移民の存在に注目して探っていきたいと思います。

■ スペインを追放されたユダヤ人

 1469年、イベリア半島に位置するカスティリャの王女イサベルとアラゴンの王子フェルナンドが結婚しました。10年後の1479年には両国は統合してスペイン王国となり、同王国は2人によって共同統治されることになりました。そしてスペイン王国は1492年1月、イスラーム教国ナスル朝の最後の拠点グラナダを陥落させ、イスラーム勢力はイベリア半島から撤退します。これにより、キリスト教国家によるレコンキスタが達成されました。

 長期間にわたり、スペインには、イスラーム教の信者であるムスリム、そしてキリスト教徒、さらにユダヤ教徒も住んでいました。イベリア半島はこの3つの宗教が混在する地域だったのですが、この時、ムスリムだけではなくユダヤ教徒もスペインから追放されたのです。スペインがカトリック国として知られるのは、そのためです。

 ユダヤ人は、商業や金融に秀でていたばかりか、国家の財政についても大きな役割を果たしていたとされます。その彼らが追放され、いなくなってしまいました。このイベリア半島を追われて世界各地に散らばっていったユダヤ人をセファルディムと呼びます。

 スペインの地を追われたユダヤ人は、いくつもの地域をさまよい、ヨーロッパ内部に定住していきます。そして、スペインを追放されたユダヤ人の最大の移住先となったのがオスマン帝国だったのです。

 そこで発揮されたユダヤ人の商業力は、オスマン帝国発展の要因の一つになりました。

■ 移住を余儀なくされたユダヤ人

 スペインから追放されたユダヤ人の数は、15万人から40万人くらいまでと、いくつかの説がありますが、およそ20万人というのが妥当な数だと言われています。いずれにしても相当な人数です。

 その中には、スペインの隣国、イベリア半島の西端にあるポルトガルに逃れたユダヤ人もいました。ポルトガルは、当初、改宗しないユダヤ人に寛大な態度を取っていましたが、やがてスペイン以上に厳しい態度をとるようになります。さらに1536年になると、ユダヤ人を根絶やしにするために、異端審問が開始されます。その刑罰は大変過酷であり、改宗しないユダヤ人たちは、生きながら焼かれたと言われています。

 こうしたことから、イベリア半島に残ったユダヤ人は、ユダヤ教からカトリックに改宗するしかありませんでした。

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 新世界に移住するユダヤ人もいました。彼らの多くは、表向きは別の信仰を持っているものの、現実にはユダヤ教を信じており、「隠れユダヤ人」(crypto Jews)といわれる人々でした。彼らがポルトガルの植民地のブラジルからニーウアムステルダム(現在のニューヨーク)に到着したのは1654年のことでした。これが、ニューヨークにおけるユダヤ人コミュニティの発祥とされます。

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■ 異教徒に寛大だったオスマン帝国

 現代のイスラーム教について、「他宗教に不寛容で戦闘的な宗教」というイメージを持っている人もいるかもしれませんが、それはイスラーム教本来の特徴ではありません。本来、イスラーム教は他宗教に寛容で、中世のムスリムはキリスト教徒やユダヤ教徒と共存していました。

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 実際、16世紀にオスマン帝国の経済力が上昇した背景には、ユダヤ人の力がありました。彼らは地中海、ヨーロッパの商業ネットワークに通じていたばかりか、多くの言語を知っており、貿易商人として重要な役割を果たすことができたからです。また、オスマン帝国内の都市で、ギリシアの大都市テッサロニキに住むユダヤ人は、科学・技術に大きな貢献を果たしました。

 さらにオスマン帝国のユダヤ人の中には、スルタンへの助言者として有力者になる人たちもいました。(続きはソース)

10/24(土) 6:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20201024-00062650-jbpressz-life
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