※日経クロステック

ドコモが新料金「ahamo」で開けた、ショップ改革というパンドラの箱
金子 寛人 日経クロステック/日経コンピュータ
2020.12.10

(略)

 質疑応答でその点を井伊社長に尋ねてみた。井伊社長は「ダメですという応対は絶対ないと思うが、ahamoの基本的なコンセプトはオンラインで簡単にできるということ。これからの新しいリモート型社会で求められる、人となるべくコンタクトしなくてもできるサービスを考えた」としたうえで「そういうこと(ユーザーがドコモショップを訪れて手続きを求めること)は起きうると考えている。どうしてもそれ(オンラインの手続き)ができない方を助けないといけない場合も出てくると思う。今後考えたい」との回答だった。

 おそらくは、「ドコモ初期設定サポート」と同様に1回あたり数千円の料金を徴収したうえでドコモショップが対応する形になると記者は予想する。ピーチやZIPAIRがコールセンターも用意しつつ、コールセンターでの予約に手数料を徴収するのと同様のスキームだ。

 仮にドコモショップでの手続きを有償とする形が定着すれば、ドコモショップの位置づけは今後大きく変わっていくだろう。これまではユーザーが支払う端末価格や通信料の一部を原資として回し運営するコストセンターという位置づけだったが、それがユーザーの手数料を原資にサポートを提供するプロフィットセンターという位置づけに変わりうる。

 手数料の負担者と受益者が一致することで、ショップを訪れるユーザーにとっては手数料に見合うサービス品質が当然のものとなるし、ショップを訪れないユーザーにとっては通信料のコスト構造が見直されることにより、さらなる値下げの期待が持てるようになる。ドコモやドコモショップを運営する代理店にとっては、一定の採算性を確保しつつ中長期的に少しずつ店舗網を減らしていくソフトランディングの道筋が見えてくる。

 もちろん、本当にそうなるかは分からない。ドコモショップで手続きできない、あるいは手数料を徴収するといったスキームを政府が問題視する可能性もあるし、「ドコモショップでの受付は行いません」というポリシーのまま2021年3月のahamoサービス開始を迎えて店舗が大混乱するかもしれない。逆に年配のユーザーもあっさりahamoのオンライン申し込みを済ませて次々と移行していき、ほんの数年でドコモショップの多くが役割を終えるというシナリオもありうる。

 いずれにしてもドコモは、ahamoの提供開始に合わせてドコモショップの改革という大きなパンドラの箱を開けてしまった。そしてそれは不慮の事故ではなく、ドコモが意思を持って自ら開けたパンドラの箱なのだろう。記者はそう感じた次第だ。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00138/120800690/?P=3