全国で新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、47都道府県で唯一、島根県で感染者の死亡ゼロが続いている。県や医療関係者は入院病床が現時点で十分に確保できており、重症化を未然に防止できているためではないかと推察する。福祉施設でクラスター(感染者集団)が発生していないことや、濃厚接触者にとどめない幅広いPCR検査で市中感染を抑えている要因も大きいが、高齢者が多い土地柄だけに、地域一体で感染防止に臨む連帯意識の持続が不可欠だ。

 県や松江市によると県内の累計感染者数は14日時点で全国3番目に少ない231人。173人で最少の鳥取県の死者は2人、2番目の178人の秋田県は死者1人で、人口や感染者数の少なさに関係するようにみえる。

 ただ、感染者739人の新潟県が死者5人にとどまる一方、感染者が7番目に少ない449人の岩手県は死者25人に上っており、一概には言えない。

 ◆軽症者も原則入院◆

 島根県薬事衛生課の田原研司課長は「患者が適切な治療を受けられる環境が大切だ」と感染判明後の対処をポイントに挙げる。

 島根では、無症状や軽症の患者も入院を原則としており、私立高校サッカー部でクラスターが発生した時期を除き、全ての人が医療機関で手当てを受けている。感染ピーク時に208人と見積もる推計患者数を基に、20カ所以上の医療機関で計235床のコロナ用の入院病床を確保しており、14日時点の病床使用率は7.1%で全国最低水準となっている。

 予防医学が専門の国際医療福祉大病院(栃木県)の一石英一郎教授は「死者の増加につながる重症患者を出さないためには、自宅待機者を減らすことが欠かせない」と指摘。症状の有無にかかわらず、医療態勢が整った施設で治療を受けて療養する重要性を説く。

 警察庁によると、2020年3月から12月にかけて感染後に医療機関以外で死亡した人は全国で少なくとも122人に上った。今月も各地で自宅療養者の死亡が相次ぎ、14日時点で死者が707人となった東京都内では、入院や療養先が決まっていない感染者が6575人に達している。

 ◆一気に悪化の可能性◆

 感染確認後の幅広い検査も、今のところは機能している。

 島根の感染者の7割が集中する松江市では、陽性者と同じ職場、フロアで勤務していた人や、立ち寄り先の関係者も対象に含めて検査を行い、感染拡大の芽を摘み取っている。20年12月は感染確認者数(23人)の60倍に当たる計1350人分を調べた。重症化に至る前の早めのケアにつながっていると言える。

 ただ、病床の絶対数が多いとは言えないだけに、感染拡大の波が押し寄せれば一気に状況が悪化する可能性はある。市医師会の泉明夫会長は、あらためて個人でできる予防を徹底するとともに「疑わしい場合はとにかく早く検査をすることだ」と話している。

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