国内でもついに新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が始まった。

2月から接種が進む米製薬大手ファイザーとドイツのバイオ製薬ビオンテックが開発したワクチンは「mRNAワクチン」と呼ばれるタイプで,
COVID-19で初めて実用化した。国内で審査が進む英製薬大手アストラゼネカ製のワクチンは「ウイルスベクターワクチン」と呼ぶ別のタイプで,
こちらも2019年に登場したばかりだ。

私たちが打つことになるこれらのワクチンには,21世紀に入って確立された最先端のバイオテクノロジーが詰まっている。

mRNAワクチンは急に登場した技術のように見えるが,その研究開発の始まりは30年前に遡る。
1990年,米ウィスコンシン大学の研究チームがmRNAをマウスに投与し,筋細胞でタンパク質を作らせる実験に成功したとScience誌に報告した。

注射したmRNAが動物の体内で正常に働くことがわかり,病気の治療やワクチンにmRNAを使うアイデアが生まれた。
実は,もう1つの「ウイルスベクターワクチン」も開発の機運が高まったのはちょうど30年前だ。

どうしてたった1年でCOVID-19のワクチンが完成したのかと言えば,それはパンデミックが起きる30年前からこれらのワクチンが研究されてきたからに他ならない。

これらのワクチンは臨床試験で効果と安全性が確かめられ,実際の接種でも高い効果を示すデータが得られはじめている。
ただ,大勢の人が接種を受けるとまれな副反応が生じる可能性もある。世界中で報告が相次ぐウイルス変異の影響も見通せず,不確定な要素はまだ多い。

そこで,副反応に対処するための情報収集システムの運用や,変異し続けるウイルスに対応するための準備も進んでいる。
https://www.nikkei-science.com/202105_032.html


徹底解説:COVID-19ワクチン接種
https://www.nikkei-science.com/202105_031.html

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン接種が日本でも始まった。接種されるのは今までと異なる仕組みで効果を発揮する「最新モデル」のワクチンで,
実は30年にわたる長い研究開発の結果生まれたものだ。

効果や安全性については長らく不明な点も多かったが,COVID-19の流行のために実施された大規模な臨床試験によって,
高い効果と従来ワクチンと変わらない安全性を持つことが明らかになってきた。