倉原優 | 呼吸器内科医
6/13(日) 11:48

新型コロナワクチンの接種がすすんでいます。当初接種スピードが遅いのでは・・・と懸念していましたが、どこの自治体も頑張っておられ、子どもや職域の接種まで開始されることになりました。
第4波も落ち着きつつあるためか、「新型コロナはただの風邪」「基礎疾患がない人は軽症で済むのだから騒ぎすぎ」という意見を再びよく耳にするようになりました。
若年者や基礎疾患がない患者さんの大部分が軽症で終わることは間違いありません。その人たちにとっては、結果的に「新型コロナはただの風邪だった」と言えます。
同様の感染性を持つインフルエンザでは、国をあげてこれほど議論されることはありません。そのため、「騒ぎすぎ」という意見が出てくることも、よく理解できます。
しかし、新型コロナはただの風邪ではありません。改めて、以下にその理由を述べます。




理由1:重症化率が違う

医療従事者として実感される差は、「重症度」です。肺炎を起こす頻度が高いのです。私は長らく市中病院で呼吸器内科医をやっていますが、インフルエンザ肺炎で入院する人は、年に数えるくらいしかいません。コロナ病棟を有しているとはいえ、1施設で1年間に400例以上のウイルス性肺炎を診るというのは、異常事態です。
「周りに感染している人なんて誰もいない」という意見もあります。2021年6月12日時点での累積感染者数は約77万人なので、確かにインフルエンザほどは身近に新型コロナ感染者を目にしないはずです。しかし、もしインフルエンザと変わらないくらいの重症度なら、入院が必要な人はもっと少なくなるはずです。
「新型コロナだから入院閾値を下げている」というのは正しくなく、パンデミック初期は確かにそのような対応をしていましたが、最近は必要なケースのみにしぼって入院を引き受けています。
そのため、肺炎を起こした新型コロナ患者さんが、これだけたくさん入院しているというのは、ウイルスそのものの毒性が強いからに他なりません。
入院を要した新型コロナ患者さん8万9,530人と、季節性インフルエンザ患者さん4万5,819人を比較したフランスの研究では、死亡率はそれぞれ16.9%、5.8%という結果でした(1)。同様に、入院を要した新型コロナ患者さん3,641人と、季節性インフルエンザ患者さん1万2,676人を比較したアメリカの研究では、死亡率はそれぞれ18.6%、5.3%でした(図)(2)。入院を要した患者さんだけをみているのでいずれも死亡率が高いですが、インフルエンザよりも新型コロナのほうが重症化しやすいことが分かります。

病院の医療従事者は、普段から入院が必要な患者さんばかりを診ているので、現場でインフルエンザとの違いを感じることができます。
しかし、それ以外はやはり軽症ですから、一般の人には「ただの風邪」としてうつってしまいます。たしかに「大部分は軽症」というのは決して間違いではないのですが、重症化リスクや死亡リスクが高いということがこれまでのウイルスとは違うところです。





理由2:集中治療用ベッドが逼迫する
     ===== 後略 =====
全文は下記URLで
https://news.yahoo.co.jp/byline/kuraharayu/20210613-00242752/