■人権派弁護士への表彰

7月1日、アメリカの国務省で、人身売買と闘う「ヒーロー」への表彰式が行われました。
8人選ばれたうちの一人が、日本で外国人労働者の権利保護に取り組む弁護士の指宿昭一さんです。

米国務省がまとめた今年の人身売買に関する年次報告書では、技能実習制度の悪用などを挙げ、
「日本政府は人身売買撲滅の最低基準を完全には満たしていない」と指摘しています。そうした日本の状況のなかで、
指宿さんの取り組みについて、「日本の技能実習制度における強制労働の被害者を支援し、虐待を防止してきた」と評価していました。

(中略)
指宿さんは今年の通常国会に政府が提出した出入国管理法(入管法)改正案や現在の入管行政の問題点を指摘。
3月にスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が名古屋の入管施設で死亡した問題でも遺族の代理人を務めています。

5月17日、ウィシュマさんの遺族が名古屋入管の施設を訪れたときには、法務省・入管側は指宿さんら同行した弁護士の視察を拒否。
翌18日夜にウィシュマさんの遺族と上川陽子法相が面会した際も、最終的に指宿さんの同席が認められたものの、指宿さんは面会後に次のように振り返りました。

「私は大臣に名刺を渡そうとしたが、名刺交換に応じないし、私の問いかけに返事もない」

■抗議を繰り返す日本政府
中略)
司法のチェックや収容期限もなく、在留資格のない外国人を全員収容する日本の入管政策に対しては、国連の人権機関から繰り返し厳しい勧告がなされてきました。

今回成立が見送られた入管法改正案に対しても、国連人権理事会の3人の特別報告者と恣意的拘禁作業部会が3月末、
連名で「国際的な人権基準を満たしていない」と改正案の再検討を求める書簡を日本政府に提出。国連難民高等弁務官事務所も同様の「懸念」を表明していました。

ところが、日本政府が取った行動は抗議です。

国連人権高等弁務官事務所に対して4月6日に行った申し入れでは、「(法案は)外国人の人権に十分に配慮した適正なものだ」と反論。
「我が国から事前の説明を受けずに、本書簡において一方的に見解を公表したことについては、我が国として抗議せざるを得ません」と主張したのです。
近年、国連の特別報告者に対する日本政府の抗議や軽視が目立ちます。

(中略)
■「王冠にのせる宝石」

「日本は長い期間、国連人権理事会の理事国を務めており、特別報告者の制度をつくってきた重要な担い手の一つです。
それにもかかわらず、日本への勧告が出るたびに、『勧告は誤解に基づいている』『事実誤認だ』『不適切な内容だ』『一方的な声明だ』と拒絶し、
否定しています。このような態度は世界中からどのように受け止められるでしょうか」

このように心配しているのは、イギリスのエセックス大人権センターフェローの藤田早苗さんです。

藤田さんは、特別報告者の権限は国連憲章に根拠があり、その手続きは人権理事会で定めた「行動綱領」に基づいて行われていることを解説。
「特別報告者の勧告は、日本政府も実施義務を負う人権条約などの国際人権基準に基づくもので、個人的な意見ではありません」と指摘します。

■「批判もする友達」
藤田さんがキーワードとしてあげるのが、「クリティカル・フレンド」です。

「日本語では『批判もする友達』と訳されますが、大事な友達が、何か危険なことをして傷つきそうなときに、警告をする友達のことです。
特別報告者はそうしたクリティカル・フレンドとして、多くの国に勧告を与えてきました。
忠告してくれる友達に対して、『私は悪くない。おまえがおかしいのだ』という人がいたらどう思うでしょうか?
忠告に対して『ありがとう』と受け入れ、建設的な対話を行い、改善するのが成熟した態度ではないでしょうか」

これは国際社会との向き合い方だけではありません。

先月末に発売された月刊誌の対談で、安倍さんが東京オリパラについて、「歴史認識などで一部から反日的ではないかと批判されている人たちが、
今回の開催に強く反対している」と主張しました。新型コロナウイルスの感染拡大が進むなかでの開催に対し、
「健康と命」を優先するよう求める訴えに対して、「反日的」という一方的なレッテルを貼っておとしめようとしたのです。
まるでトランプ前米大統領のように、分断をあおるかのような言説です

https://news.yahoo.co.jp/articles/7a98f5506c829eeba9eb3bd84ccf490bbb9dbe5d?page=1