新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療薬となる可能性が指摘されていた「イベルメクチン」は
人間用に処方されることもありますが、元来は家畜用の抗寄生虫薬です。

新型コロナウイルスのデルタ株流行によって再び感染爆発を迎えているアメリカにおいて、
家畜用のイベルメクチンを服用するアメリカ人が急増しており、国内の医薬品・食の安全を管轄するアメリカ食品医薬品局(FDA)が
「あなたは馬でも牛でもありません」と公式警告を出す事態に至っています。


イベルメクチンは線虫や節足動物に非痙攣性の麻痺を誘発するという薬で、
熱帯地方の風土病であるオンコセルカ症やリンパ系フィラリア症に極めて優れた効果を示す医薬品です。

中南米・アフリカにおいて毎年約2億人余りの人々を感染症から救っており、
イベルメクチンの発見者である北里大学の大村智特別栄誉教授は、この功績をもって2015年に日本で3人目となるノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

以上のようにイベルメクチンは抗寄生虫薬ですが、2020年に世界的に流行したCOVID-19の惨禍においては
「治療薬になり得る」と世界中から注目が集まりました。日本においても治療薬としてイベルメクチンを投与する動きが見られた他、
インドや韓国でも同様に投与が行われましたが、COVID-19に対してイベルメクチンは「何の効果もない」という研究結果があがっており、
世界保健機関(WHO)もイベルメクチンの有効性を否定しているというのが現状です。

しかし、そんなイベルメクチンの中でも「家畜用」のものを自分で購入してCOVID-19対策として服用する、
というアメリカ人が急増しています。前述のようにイベルメクチンは人間にも使われますが、大本は人間よりも先に動物に投与された薬で、
豚や馬などの家畜の線虫症や疥癬(かいせん)の治療に使われます。

ワクチン接種率の低いミシシッピ州においては、有毒物質や有害物質に関する公的医療機関である毒物管理センターへの問い合わせの70%が
「畜産センターで購入した家畜用のイベルメクチンを服用してしまった」という内容とのこと。

当然ながら人間用の医薬品と家畜用の医薬品では用法と用量が大きく異なるため、家畜用のイベルメクチンを服用した場合は、
吐き気・嘔吐・下痢・低血圧・アレルギー反応・めまい・発作、ひいては昏睡や死亡などの甚大な副作用を招きかねません。

アメリカではすでに家畜用イベルメクチンの服用による入院者も複数現れているとのことで、
食品医薬品局はそもそもイベルメクチンはまだ効果が証明されていない点を指摘しつつ、
「あなたは馬でもなければ、牛でもありません。本気でやめてください」とイベルメクチンを服用しないように呼びかけています。
https://gigazine.net/news/20210823-fda-beg-americans-stop-livestock-ivermectin/

COVID-19の治療または予防にイベルメクチンを使用すべきではない理由
https://www.fda.gov/consumers/consumer-updates/why-you-should-not-use-ivermectin-treat-or-prevent-covid-19