<民なくして(中)多様性>

 「一時の辛抱だと思って事実婚にした。まさか、27年も続くなんて…」
 団体職員の小泉祐里さん(52)と研究者の田中浩さん(62)=茨城県牛久市=は1994年に挙式した。婚姻届は出さなかった。以来、ずっと、「選択的夫婦別姓制度」実現を待ち望む。
 制度実現への兆しはあった。96年、法制審議会が制度導入の民法改正案を答申。だが自民党国会議員らが「家族の一体感が損なわれる」などと反対し、法制化には至っていない。
◆家族も周囲も理解、それでも…
 仕事への影響もあるが、小泉さんはそれ以上に「これが私の名前。変える意味がわからなかった」。夫の田中さんも姓を変えたくないし、妻に改姓を強制することもしたくなかった。
 「事実婚にする」と伝えた時、小泉さんの母は「同棲どうせいと何が違うの」「けじめがない」と反対したが、父が「若い世代がそう言うなら」と説得してくれた。今は父母ともに2人を応援してくれる。田中さんの両親も認めてくれた。
 4年後、一人息子の知碩ともひろさん(23)が誕生し、姓は「小泉」に。夫婦でもめることはなかった。知碩さんが友達に「お父さんと名字が違うの?」と聞かれても「そうだよ」と言えば、大概は「ふ?ん」で終わった。
 「うちは仲が良い方だと思う。『両親の名字が違うと子どもがかわいそう』とか『家族が崩壊』とか言う人がいるけど、そんなことはない」と知碩さんは言う。
 2019年3月、IT企業「サイボウズ」の青野慶久よしひさ社長らが、夫婦別姓を認めない法制度を違憲と主張した訴訟の東京地裁判決を、小泉さんは知碩さんと傍聴した。「画期的な判決」との期待は裏切られ、請求は棄却。その瞬間、「自分たちの存在がないものとされている。待っているだけじゃダメ」と気付かされた。
◆国会に声は届くか
 小泉さんは若いころ、夫婦別姓が認められるには、議員に「自分たちの存在」を伝える必要があると聞いた。当時は一歩を踏み出せなかったが、いつまでも動かない国会に声を届けることを決意。市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」に加わり、夫婦でこれまでに茨城県内の7市町議会に働きかけ。団体の活動もあり、15年以降、全国で250議会が夫婦別姓に関する意見書を可決している。
 衆院選で、立憲民主党は「民法を改正し選択的夫婦別姓を導入」を公約に盛り込んだ。一方、岸田文雄首相は「個性と多様性を尊重する社会を目指す」と訴えたが、自民党の公約は「夫婦別姓」に言及していない。
 夫婦同姓しか選べない国は、法務省が把握する限り日本だけだ。小泉さんは「姓の変更を望む人も変えたくない人もいる。個人の選択を認めてこそ、多様性ある社会」と思う。(奥野斐)

東京新聞 2021年10月16日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/137030
★1 2021/10/16(土) 08:10:55.23
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