障害ある娘に代わり投票した母「まさか起訴されるとは」 関係者に広がる衝撃
12/2(木) 7:02

 自閉症の娘と一緒に投票所に行き、見慣れない環境で「固まって」しまった娘の代わりに投票用紙に記入し投函した母親が、公職選挙法違反の罪で3月に在宅起訴されていた。11月に報じられると、裁判で刑事罰に問おうとする検察側の姿勢に「そこまでやるのか」「まさか起訴とは」と関係者らの間で衝撃が広がっている。専門家も異例と語る今回のケースは、障害がある人の家族にとっても人ごとではない。投票現場では何が起きていたのか。(共同通信=真下周、鈴木優生)

 ▽聴覚過敏だが、ピアノが得意

 大阪市を廃止し、4特別区を設置する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票の投開票は昨年11月1日に実施された。淀川区に住む自営業の母親(59)は10月25日、自閉症で身体障害もある長女(22)を車いすに乗せ、期日前投票のため区役所を訪れた。

 母親によると、長女は療育手帳A(知的障害が重度)。障害の判定所見には「面接で発話や発声はできず、名前の呼び掛けにも応答しない。3歳級の発達段階で、スプーンを持って食事し、リモコンを操作してテレビを消すことはできる。不快刺激に敏感でパニックに陥ることもしばしば」と記されている。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d8249a824a38d61e1d3b3ce389c5ddf593d65a5d

 ▽選管と母親、異なる認識

 一連の出来事を選管側はどう見ていたのか。淀川区の担当者は取材に「職員は、母親に『代理投票ですか』と声掛けした。勝手に用紙に記入した際も『職員がやります』と制止したが、それでも振り切って投票した。職員としてやるべきことはしたが、(お母さんの)迫力で押し切られた」と説明した。代理投票について説明しようとし、長女の意思も確認しようとしていたが、母親にまくしたてられ、隙を突かれて投票されてしまったという主張だ。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d8249a824a38d61e1d3b3ce389c5ddf593d65a5d?page=2

 ▽障害者への「上から目線」

 「まさか起訴されるとは」。そう話す母親は「法を破ろうとは思っていなかった。代理投票のルールの説明はなく、どのようにして意思を確認するか協議もなかった」と振り返る。

 母親から見た長女には投票の意思も能力もあったが、あの場では適切な介助がなければ投票できなかった。長女のことは一緒に生活する自分が一番よく分かっているとの思いで代筆したと考えている。

 投票を振り返るたび、母親は例えようのない嫌な気持ちにとらわれる。職員らの対応に、「(この人は)本当に投票できるのか」と疑っているようなまなざしを感じたからだ。

 障害がある長女が社会参加をしようとする場面では、これまでも何度も心ない発言や差別的な対応を受け、悔しい思いをしてきた。「今回もまたか、という思いが強い。国は『ぜひ投票を』と呼び掛けておきながら、なぜ障害者の一票を上から目線でチェックするような対応をするのか。娘は今も『すごく嫌な場所』として記憶しており、次に投票があってもできそうにない。選挙権を奪われたようなものだ」と語気を強めた。
https://news.yahoo.co.jp/articles/d8249a824a38d61e1d3b3ce389c5ddf593d65a5d?page=4