https://gigazine.net/news/20220108-runners-high-increases-endocannabinoid-level/
 ランニングなどの運動は苦しいものですが、ある程度続けていると次第に多幸感や満足感、高揚感といったポジティブな感情を経験することがあります。
「ランナーズハイ」と呼ばれるこの境地に至るのに必要な運動について、アメリカ・ウェイン州立大学で神経科学を研究しているヒラリー・マルサック氏が解説しました。

A Systematic Review and Meta-Analysis on the Effects of Exercise on the Endocannabinoid System | Cannabis and Cannabinoid Research
https://www.liebertpub.com/doi/10.1089/can.2021.0113

The 'runner's high' may result from molecules called cannabinoids – the body's own version of THC and CBD
https://theconversation.com/the-runners-high-may-result-from-molecules-called-cannabinoids-the-bodys-own-version-of-thc-and-cbd-170796

ランナーズハイにおける気分の向上やポジティブな感情の増加は主観的なものですが、運動によって引き起こされる体内化学物質の変化が、
ランナーズハイと呼ばれる状態を引き起こしていると考えられています。
長年にわたってランナーズハイの原因ではないかと注目されてきたのが、有酸素運動によって体内で分泌されるエンドルフィンです。

エンドルフィンは鎮痛作用や陶酔作用をもたらすオピオイドの一種であり、体をリラックスさせて痛みを和らげるといった効果があると報告されています。
しかし、エンドルフィンは血液と脳の物質交換を制限する血液脳関門という機構を通過できないため、「エンドルフィンがランナーズハイを引き起こしている」との説には疑問も呈されていました。

そこで、近年ではエンドルフィンではなく「エンドカンナビノイド」と呼ばれる別の物質群が、ランナーズハイの原因物質ではないかとの説が有力になっています。
エンドカンナビノイドは大麻の有効成分であるテトラヒドロカンナビノール(THC)をはじめとするカンナビノイドと類似しており、血液脳関門を通過できるという特徴を持っています。
エンドカンナビノイドは人間の体内で生成され、THCとは異なる穏やかな向精神作用があるため、大麻の高揚感とは違うランナーズハイの多幸感を生み出せるとのこと。

ランナーズハイとエンドカンナビノイドの関係を調査した2021年の研究では、被験者のオピオイド受容体を薬剤でブロックしてエンドルフィンが作用しない状態でも、
被験者は運動後の幸福感や痛みの軽減を感じたことから、エンドルフィンはランナーズハイの原因物質ではない可能性が高いと示されました。
さらに、カンナビノイド受容体をブロックしてエンドカンナビノイドが作用しない状態にされた別の被験者群では、運動による幸福感や痛みの軽減といった効果が低下したことがわかったとのこと。

新たに、アメリカ・ウェイン州立大学のShreya Desai氏らの研究チームは、エンドカンナビノイドと運動について調査した33の研究について体系的なレビューとメタアナリシスを行いました。
この研究では、30分のランニングやサイクリングといった「急性の運動」と、10週間のランニングやウェイトリフティングといった「慢性の運動」の効果を比較したほか、
運動の種類や強度がエンドカンナビノイドのレベルに及ぼす影響も調査しました。

分析の結果、研究チームは急性の運動が一貫してエンドカンナビノイドのレベルを増加させ、特にアナンダミドというエンドカンナビノイドの一種で効果が一貫していることを発見しました。
興味深いことに、運動によるエンドカンナビノイドの分泌はランニング・水泳・ウェイトリフティングといった運動の種類、個人の健康状態などに左右されませんでした。

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